自分の意見を長文で書くのが苦手[中学受験]

平山入試研究所の小泉浩明さんが、中学受験・志望校合格を目指す親子にアドバイスする実践的なコーナーです。保護者のかたから寄せられた疑問に小泉さんが回答します。




質問者

小3女子のお母さま


質問

感想文など、自分の意見を長文で書くのが苦手です。ひとこと二言の箇条書きみたいになります。物語などの文章を読むのは大好きでよく読書をしていますが、書くほうができないようです。学習塾にはまだ通っておりません。


小泉先生のアドバイス

感想文などの文章に深みを付けたい時は、「感想マップ」を作ってみる


感想文を書くと、「ひとこと二言の箇条書きみたい」になってしまうとのこと。たとえば、遠足で水族館に行った時の文章を書かせると、極端に言えば、「遠足で水族館に行きました。とても楽しかったです。」で終わってしまうということでしょうか。「物語など文章を読むのは大好き」なお子さまですから、文章力もありそうなものですが、自分の思いを上手に取り出せないことに原因があるのかもしれません。つまり、自分の気持ちを整理して取り出し、順番に並べていくことが苦手なのでしょう。


そのようなお子さまは、気持ちやその時の様子を紙にどんどんメモしていくのが一番良いでしょう。たとえば「水族館に遠足に行った」という事実に対して、まず、「楽しかった」という感想を書きます(図1)。そして、そこで終わるのではなく、「なぜ」楽しかったのか、「どのように」楽しかったのかを付け加えていきます(図2)。「尾ひれをつける」というのは「実際以上に話を大げさにすること」ということで良い意味には使いませんが、ここではどんどんつけていきます。


【図1】

図1


【図2】

図2



この時大切なことは、「なぜ」と「どのように(どのようだったか)」の二つを自問自答しながら付け加えていくことです。いろいろ思いが浮かんでなかなかまとまらない場合でも、一つの事柄(今回の場合は「楽しかった」という思い)に限定できれば、集中して考えることができます。
たとえば、「なぜ楽しかった」のかを考えていくと、「イルカに触ったから」であることを思い出すという具合です。そして、そのことに対して「どのようだったか」を考えることで、一層内容が深まります。たとえば「イルカの体温が手に伝わってきて温かかった」という、楽しい経験を取り出せるのです。さらに、「イルカが哺(ほ)乳類であることをあらためて感じた」などの思いを付け加えられれば、ますます深みのある文章になっていくことと思います(図3)。


【図3】

図3



【図4】

図4



もちろん楽しかったことは「イルカ」だけではないでしょうから、ほかの事柄についても書き加えていきます。たとえば、「バスガイドのお姉さん」がおもしろかったことと、その理由やその時の様子などです。あるいは、「楽しい」ばかりでなく、「緊張した」ことや「少しつらかった」などの思いを書き加えることができるかもしれません(図4)。このようにして書き加えていくと、「感想マップ(地図)」と呼べるものが完成します。


さて、マップができ上がったら次はまとまりごとに文章にしていきます。「てにをは」が苦手なお子さまは、最初のうちはお母さんの手助けが少し必要かもしれません。しかし、徐々に一人で上手に書けるようになると思います。
「感想マップ」が良いのは、このように、一つひとつの思いをどんどん付け加えることができる点と、完成したマップを見ると出来事や思い、あるいは様子がちゃんと整理されている点にあります。しかもそれらを目で見ることができるのですから、感想文を書く時にはなんとも心強い味方であると言えるでしょう。
そして、慣れてくれば、マップなしでも頭の中だけで上手に整理ができるようになります。感想文などの文章に深みを付けたい時は、ぜひこのような「感想マップ」を作ってみてください。


プロフィール


小泉浩明

桐朋中学・高校、慶応大学卒。米国にてMBA取得後、予備校や塾を開校。現在は平山入試研究所を設立、教材開発など教務研究に専念。著作に「まとめ これだけ!国語(森上教育研究所スキル研究会)」などがある。

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