謙譲語と尊敬語がごちゃごちゃになってしまいます[中学受験]
平山入試研究所の小泉浩明さんが、中学受験・志望校合格を目指す親子にアドバイスする実践的なコーナーです。保護者のかたから寄せられた疑問に小泉さんが回答します。
質問者
小3男子(性格:大ざっぱ・感情的なタイプ)のお母さま
質問
敬語の理解があまりできていません。謙譲語と尊敬語がごちゃごちゃになって混乱しているようです。
小泉先生のアドバイス
まずは頻出事項を使って、定着させる。
●まちがえやすい謙譲語と尊敬語
子どもが年長者と話す機会が少なくなり、会話をしても友達口調(いわゆるタメ口)や、一語文(「ジュース!」など一単語からなる文)を使うことが多くなっています。そのためか、日常的に敬語を使用する機会が減っているようです。敬語を意識するのは、それこそ中学入試などのために勉強する時と、入学後のクラブ活動で、部長や先輩と話をする時くらいでしょうか。ただし、正しく使えているかどうかについてはかなり疑問が残ります。なぜなら、社会に出て正しい敬語が必要となった時、社会人1年生はマナー本や研修によって自分の使っている敬語をもう一度確認しなければならないのが一般的だからです。それほど敬語、特に謙譲語と尊敬語はまちがって使われていることが多いのです。
●尊敬語とは? 謙譲語とは?
日常的にあまり使われなくなった敬語に取り組むために、まずは尊敬語と謙譲語の意味をしっかりとらえる必要があります。それぞれの定義としては、
尊敬語……相手や話題の人を尊重しているという気持ちを表す場合に使う敬語
謙譲語……へりくだって自分を表現することで、相手を敬う場合に使う敬語
となりますが、結局は同じように思えるお子さんもいると思います。敬語などの文法事項が苦手なのは、抽象的で理解しにくいということに原因の一つがあります。小学生の場合は、高学年になるころから急激に論理的思考力が発達し、抽象的な概念が徐々に理解できるようになっていきます。しかし、個人差はありますから、そういったものを理解するのがまだまだ苦手なお子さんも多いのが現状でしょう。
そんな場合は、目で見える形で具体的に示すと納得する場合があります。先ほどの尊敬語と謙譲語でしたら、右のような絵図で示してみましょう。相手Aと自分Bが対等な時は、同じレベルにいます(図1)。この場合は、タメ口かあるいは丁寧語での会話になります。尊敬語を使う場合は、相手Aがレベルより上にいます(図2)。また、謙譲語を使う場合は、自分Bがレベルより下にいる状態(図3)と考えると、位置的には同じですが尊敬語と謙譲語の違いが直感的にわかると思います。
●まずは頻出事項から
尊敬語や謙譲語の意味がわかったら、次は、それぞれの言葉について具体的に学んでいきます。この時大切なことは、最初からすべてを覚えようとしないで、よく使われる言葉をとりあえず覚えてしまうことです。たとえば、「行く」「来る」「見る」「食べる」「言う」「する」の6つの言葉は試験にもよく出ますし、日常的にもよく使う言葉です。まずはそれらの言葉についてだけでよいですから、「見る(普通語)-見ます(丁寧語)-ご覧になる(尊敬語)-拝見する(謙譲語)」という具合に覚えてしまいましょう。代表的なものを覚えてしまうことで、まずは敬語に慣れることが大切です。試験にも頻出ですから、点数もとれるようになり、敬語に対する苦手意識も薄らぐはずです。あとは、徐々に覚える範囲を広げていけばよいでしょう。
●使うことで定着を
ただし、一覧を暗記するだけではなかなか定着しないかもしれません。言葉は、やはり使うことで自分のものになっていきます。使うというのは、敬語の問題演習を行うとか、手紙や日記など文章を書く時に正しく敬語を使う、あるいは日常の会話で敬語を使うということです。
例:子ども「今日は、校長先生が珍しい本を見せてくれたよ」
保護者「『くれた』ではなくて『くださった』でしょ?」
子ども「そうでした……」
このように使っていくと、意外に短期間である程度はマスターできると思います。敬語に限らず、文法を苦手としているお子さんは少なくないと思います。「範囲を限定する」「使って覚える」という2つの手法で、不得意を得意に変えていきましょう。