続く理系人気で大学が就活予備校化の懸念
就職難の状況が続くなか、大学受験でも、資格などに結びつきやすく、より将来をイメージしやすい理系人気が続いている。しかし、その傾向には少々行き過ぎの感もあるのではないだろうか。ベネッセ教育総合研究所の村山和生氏に、詳しく伺った。
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ここ数年ずっと続いている、文系学部よりも理系学部の志願者数が多い「理高文低」傾向。現高3生が2年生だった時の模擬試験の状況から、恐らく来年度(2015年度)の入試でも理系人気は変わらないと思われます。
その中でも、たとえば研究者志向の強い理学部よりは、工学部のほうが就活に強いと思われており、その工学部の中でも、建築など具体的な資格や専門性をイメージできる学科が人気のようです。また、農学、バイオ・生命、獣医なども人気が高く、医療技術の分野では、看護でやや上げ止まりが見られるものの、具体的な資格が見える作業療法、理学療法などは相変わらず人気が継続しています。2014年度入試でも、そういった学部の人気は高く、芝浦工大や千葉工大などといった、工学系の単科大学の人気も上がっていました。大学での学びというものを、より具体的な資格、就活場面と結びつけて考える受験生が増えていると言えるでしょう。
一方の文系学部では、「グローバル系」の人気が継続しています。ただし、その出願先を見ると、変化のきざしが見受けられました。具体的には、「グローバル系」の人気の中で選択されていた人文系の英語英文の志願者数が、若干ではありますが減少したのです。「英語が出来さえすればグローバル人材」という流れは変わってきています。「グローバル系」と一言でまとめても、各大学が提供している学びの中身は多種多様です。その中で、グローバル社会の中で真に求められる力を身につけたいという意識が強くなっているのでしょう。
ただ、今の受験生が、将来の就活場面や、自分の専門性を高めたいという意識を持って学部を選んでいるトレンドが見える一方で、特定の学部学科と職業を極端に結びつけ過ぎるなど、少し反応しすぎでは?と思わなくもありません。研究職、専門知識、グローバル……これらは特定の人気学部だけでなく、いろんな学部で身に付けることができるはずです。