今年も安全志向? 2014年入試結果に学ぶ、夏休み前に高3生がやるべきこと【後編】‐村山和生‐

前回は、昨年の入試結果を振り返り、受験生の安全志向・弱気傾向の原因などを解説しました。続く後編では、極度の安全志向に陥った昨年入試の反省を踏まえ、今年の高3生が今やるべきこと、意識すべきことについてお伝えしていきます。



安全志向は今年も続いている!?

安全志向はここ数年続くトレンドの一つ。今の高3生にもその傾向は受け継がれているようです。というのも、2年生時点での模擬試験を見ると、「超」がつく安全志向だったこの春の受験生と、志望校の記入状況がよく似ているのです。

より安全に受験を終えたいという気持ちはわかりますが、少なくとも今の時期から安全志向である必要はないのではないでしょうか。1学期の学習、夏の対策を経て、よくも悪くも学力は大きく変わります。現時点での学力、位置付け、模試の結果は、固定のものではないのです。ですから、今はなるべく選択肢を多く持ち、視野を広げてみてください。今の時点の学力だけを判断基準に志望校を絞ってしまうのは、とてももったいないです。



志望校に合格するために必要な「努力の度合い」を可視化して

今から安全志向である必要はないとはいえ、やみくもにチャレンジングな志望校を設定すればいいわけではありません。志望校と自分の今の学力の開きを把握し、それを埋めるために夏までに何をどのくらいやるべきかを整理し、しっかりと計画を立てる必要があります。
1学期の模試の判定は、あくまで「全国のライバルと比較して、自分の学力がどの程度身に付いているのか」を確認するためのものであり、間違っても「満足な判定結果が返ってこなかったから、第一志望に考えていた大学の現役合格は無理!」と、あきらめるためのものではありません。夏の間にするべき「努力の度合い(=どの教科・科目・分野を、どの程度がんばれば、自分の第一志望校合格が見えてくるのか)」を表す指標と考えるようにしてください。



続く理系人気 就職や資格にこだわりすぎる傾向も

ここ数年ずっと続いている、文系学部よりも理系学部の志願者数が多いという「理高文低」傾向。2年生の時の模擬試験の状況からも、恐らく皆さんが受ける来年度の入試でも理系人気は変わらないと思われます。
その中でも、たとえば研究者志向の強い理学部よりは、就活に強いイメージのある工学部、その工学部の中でも、建築など具体的な資格や専門性をイメージできる学科が人気のようです。また、農学、バイオ・生命、獣医なども人気が高く、医療技術の分野では、看護でやや上げ止まりが見られるものの、具体的な資格が見える作業療法、理学療法などは相変わらず人気が継続しています。2014年度入試でも、そういった学部の人気は高く、芝浦工大や千葉工大などといった、工学系の単科大学の人気も上がっていました。大学での学びというものを、より具体的な資格、就活場面と結び付けて考える受験生が増えているといえるでしょう。

一方の文系学部では、「グローバル系」の人気が継続しています。ただし、その出願先を見ると、変化の兆しが見受けられました。具体的には、「グローバル系」の人気の中で選択されていた人文系の英語・英文の志願者数が、若干ではありますが減少したのです。「英語ができさえすればグローバル人材」という流れは変わってきています。グローバル社会の中で、どのように活躍していくのか、その際に必要になるのは、英語力なのか、他の言語なのか、それとももっと基礎的なコミュニケーション能力や批判的思考力などの力なのか……。「グローバル系」とひと言でまとめても、各大学が提供している学びの中身は多種多様です。その中で、グローバル社会の中で真に求められる力を身に付けたいという意識が強くなっているのでしょう。

ただ、今の受験生が、将来の就活場面や、自分の専門性を高めたいという意識を持って学部を選んでいるトレンドが見える一方で、特定の学部学科と職業を極端に結び付けすぎるなど、少し反応しすぎでは? と思わなくもありません。研究職、専門知識、グローバル……これらは特定の人気学部だけでなく、いろいろな学部で身に付けることができます。夏のオープンキャンパスなどを利用して、ぜひいろいろな学部・学科・大学の中身に興味を持って見てください。今この時期は、第一志望校や学部の中身について、時間をかけてじっくり考え直せる最後のタイミングです。焦って絞り込まず、視野を広げることが大事です。



今こそ、しっかりと基礎固めを 多様な素材に触れる意識も

難しかった2013年より、さらに難しくなったと話題になった2014年のセンター試験「国語」。ですが、よくよく見てみると、意外と基礎的な事項で取りこぼしている受験生が多かったのも特徴です。
また、今の高3生が受けた2年生までの模擬試験などでも、基礎的な事項をうまく取りきれていない人がずいぶん多く見受けられました。特に理科と数学は新課程になりボリュームも増えていますから、基礎事項が定着しきれていない人も多いはずです。

新課程以外でも、より実践的なコミュニケーション能力を重視する傾向が強まっている英語では、たとえば飛行機の時刻表やスーパーのチラシなど、教科書等で見たことのないような素材であっても、そこから内容を読み取り、理解する力が求められています。つまずく人の多い地歴公民の資料の読み解きも同じです。
ですから、今最も大切にすべきは基礎的な事項の定着。そして今から教科書以外のさまざまな素材に触れておき、仮に問題傾向が変わっても慌てずにすむよう対策してください。ただし、過去問などを解き始めるのはまだ先です。

高3生の皆さんは、これからどんどん忙しくなっていきます。そういう意味でもとても貴重な今の時期、とにかく視野を広く持ち、納得できる大学選びをすることが大切です。また夏以降の学習をより効率的にするためにも、今のうちにしっかりと基礎固めをしてくださいね。


プロフィール


村山和生

ベネッセでは進研模試等を通した高等学校への進路指導支援、大学入試分析、進路説明会講師等を担当。2012年からはベネッセ教育総合研究所・高等教育研究室のシニアコンサルタントとして大学の教学改革支援や入試動向分析、「VIEW21大学版(現:Between)」編集長等を担当。16年からは「ベネッセ i-キャリア」にて大学生向けアセスメント分析や大学IRのための統合データベース開発などを担当。17年からは一般財団法人大学IR総研の調査研究部にて、研究員として高等教育全般の調査・研究と教学改革支援、ならびにIRの推進支援に携わる。
ベネッセコーポレーション帰任後は、学校支援事業の経営企画業務に従事。21年からベネッセ文教総研の主任研究員として、高等教育を中心に「学修成果の可視化」「IR」を主なテーマとして調査、研究、情報発信を続けている。

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