「まちがい」という宝を生かす [中学受験 6年生]

保護者の役割は、成長に応じてベストのタイミングで働きかけ、環境を整えていくこと。苦手を得意に変える、まちがえた問題の見直し法について取り上げます。



■6年生はこの時期、苦手と得意の「まだら状態」になりがち

6年生のお子さまは、第一志望校をおおよそ固められたかたが多いと思います。しかし、塾などに希望を伝え、コース選択をしたものの、本当にこれでいいのか、どうも成績が伸び悩んでいるのでは……そう感じている保護者のかたも多いのではないでしょうか。今の時期は、5年生の間に小学校で習う単元はひととおり終えたところで、得意な部分と苦手な部分が混ざり合っている、という状態のお子さまが多い時期なのです。

苦手を得意にしていくために、今ぜひ取り組んでいただきたいのは、まちがえた問題についてノートに整理していく習慣付けです。僕はこれを「まちがいノート」「ドジノート」と名付けています。このノートが、すばらしい宝物になるのです。



■自分の頭の中を見直す「まちがいノート」の作り方

「まちがいノート」はきれいに書くことより、自分がどこでまちがえたか、どの視点が欠けていたかといったウイークポイントを、しっかり書き込むことが大切です。たとえば、1週間に算数を3時間やった場合、すべてのまちがえた問題の中で、特にご本人が「できるはずだと思ったのにできなかった、悔しいなあ」と感じた問題が5問あれば、それをノートに記していくよう指導します。まちがえたすべての問題でなくてかまいません。
たとえば補助線を1本ひけなかったとか、単位をまちがえたとか、わからなかった点とその先の考え方をわかるように書かせます。どこまでがわかっていて、どこから先でまちがえたか、自分の頭の中をのぞいて内省する作業になります。そんなノートを、算国理社の教科別に作って、記録する習慣を付けさせてください。理社なら、いろんな参考書のわかりやすい解説をそこに書き込んだり、コピーして貼ったりするのもよいですね。
この癖を付けておくと、同じまちがいをしなくなるだけでなく、その単元への理解がさらに深まっていく。苦手が得意に変わっていくのです。このノートを、塾の組分けテストの前など、月1回程度見直すようにしてください。



■まちがいは宝物。「なかったこと」にしない!

とはいえ、まちがいの見直しというのは地道な作業です。誰しも、自分の失敗は見たくないし、まちがえたことに自己嫌悪を感じて「なかったこと」にしてしまいたいという気持ちを持っています。よくあるのは、テストのまちがいを見直さず、きれいに消して正解を書いてしまう癖。あるいは、次にまちがえないために答えだけ覚え込んでしまう癖です。こういう癖をそのままにしておくと、6年生の2学期くらいから、成績が下がってきてしまう子が多いんですね。

本当は「まちがい」「失敗」こそが大事。まちがいは宝物、と保護者のかたがお子さまの価値観を転じてあげてください。ましてや、まちがいや失敗を叱るのは論外です。

実は、中高一貫校に進学した生徒さんの中にも、「まちがいは見たくない」というかたが多いのです。頭がよくてプライドの高いお子さまにありがちなのですが、見直しなんてカッコ悪いと思っていて、こんなもの満点が当たり前、と言いたくてテストを受けている(笑)。テストの点数は、実はそれそのものに価値はなく、テストでわかった弱点をそのあとどうするかが大事なのです。まちがいを認めないお子さまは、あまり伸びませんし、大人になってもっと大きな問題に直面した時、乗り越えられないケースも多いのです。まちがいを見直せる愚直さこそが知的な誠実さであり、「失敗は成功のもとだよ」と、ぜひこの時期に教えてあげてください。上手な見直しのしかたが身に付くと、この先の伸びしろが大きくなるのです。


プロフィール


森上展安

森上教育研究所(昭和63年(1988年)に設立した民間の教育研究所)代表。中学受験の保護者向けに著名講師による講演会「わが子が伸びる親の『技』研究会」をほぼ毎週主催。

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