子育ては「さじ加減」 期待しすぎないくらいでちょうどいい
高校の入学式が終わると、あとは勉強の日々が始まる。この機会を逃すと、保護者が子育ての在り方についてあらためて考える時間は少ない。安田教育研究所の安田理氏が、先ごろ亡くなった詩人・吉野弘氏の詩を交えてお話しをしてくださった。
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「二人が睦まじくいるためには 愚かでいるほうがいい」で始まり、結婚式の披露宴でよくスピーチに引用される詩「祝婚歌」で知られる詩人・吉野弘さんが今年1月に亡くなられました。そこで、吉野さんの詩集を書庫から取り出して、改めて読みました。その本の巻末に掲載されていた茨木のり子さんの文章によると、「優しさ」「意味の深さ」「言葉の清潔さ」が、吉野さんの詩質の持つ美点だといいます。
私は「奈々子に」という作品がとりわけ好きです。吉野さんに初めての子どもができた時に作った詩で、生まれたばかりの娘・奈々子に対し、自分が奈々子に多くは期待しない、ということを伝える内容です。
仕事で受験の相談を受ける時、「難関校に入って優秀な友達から大いに刺激を受けてほしい、と考えている」「私立だったら、〇〇高校か☓☓高校しか受けさせない」「主人が『大学は東大しか認めない』と言っているので……」と語る保護者に接するたびに、この詩のこの一節がのどまで出かかります。
しかし、学校の先生だったらどうでしょう。「先生が自分に期待している」ことを感じさせなかったら、むしろ生徒は伸びないのではないでしょうか。たいがいの先生の期待は、無謀なものではなく、生徒に可能性があるから。保護者としても我が子を客観的に見つめ、妥当な範囲で期待をかける。そこがポイントのように感じます。
大きすぎてもいけない、小さすぎてもいけない、なくてもいけない。期待にも「さじ加減」のようなものがあるような気がするのです。