2014中学入試は転換点なのか?[中学受験合格言コラム]

2014中学入試は転換点なのか?

リーマンショック以降の中学入試における受験者数の減少は長期間続いている。しかし、2013年度入試から減少が緩和され、さらに景気が好転したことで2014年度入試は受験者数がほぼ横ばいとなる大きな転換点となり、2015年度は増加に転ずる可能性がある。転換点といえるのは、受験者数だけではないようだ。受験生・保護者のニーズについても同様なことがいえるのではないか。

学校ランクと学校種別(男子校・女子校・共学校)の相関による2014年度入試の分析結果を見てみよう。下表を見ると、学校種別の前年対比は、男子校・女子校・共学校の合計は98.1%・96.7%・97.2%でそれほど大きな差はなかった。リーマンショック直後の2010年度入試の受験者数前年対比では女子校84.6%に対し男子校は96.0%と大きな差があったが、この2~3年は差が付かなくなる傾向が見られる。このような受験者数の分類要素が平均化することが横ばいの前兆で、付属校・進学校・半付属校の受験者数前年対比でも同様の現象が見られる。リーマンショック以降、不況下では、学校ランクは、上位ランクと中下位ランクで減少率の二極化が顕著であったが、2014年度入試ではその傾向が多少緩和された。しかし、学校ランクの一部には二極化が残っており、B・Cランクの前年対比が前年を上回り、Gランクが10ポイント以上の減少となった。

学校ランクと学校種別をかけ合わせたマトリックス単位で見ると、学校ランクや学校種別の受験者数前年対比の増減原因がわかる。Eランクの減少(92.6%)は共学校(91.2%)が原因で、Gランクの減少(89.2%)は女子校(90.5%)と共学校(84.8%)が原因であることがわかる。また、Bランクの増加(102.0%)は男子校(101.4%)と共学校(103.6%)が原因で、Cランクの増加も同様に原因がわかる。

「受験生・保護者が、どのような学校を求めているか」を大手塾の先生に尋ねたところ、東大合格一辺倒ではなくなったようだ。もちろん、東大志向は現存するが、その他にもニーズがあり、多様化しているそうだ。ニーズをまとめると次のようになる。

1.東大の合格者が増えた学校。特に、入学時の偏差値の割に東大合格者が多い、つまり、学力を伸ばしてくれる学校。
2.医療系を含む理系の大学合格実績が多い学校。特に、理系女子がブームとなり、女子校で理系大学合格実績が高い学校。また、理系大学の付属校・半付属校。
3.英語教育に優れた学校。修学旅行レベルではなく、英語で授業を受けられるレベル。語学力を付けられるシステムを持つ学校。
4.人間力を身に付ける教育を行う学校。従来、私立中学校が行ってきた情操教育だけではなく人生を切り開く力を身に付けることができる教育を行う学校。

受験者数の転換点になる可能性のある2014年入試で、受験生・保護者のニーズが顕著に多様化し始めたことは偶然ではないかもしれない。受験生・保護者の中高一貫校に対するニーズも転換点にあるようだ。これまでの学歴を得るための教育が求められていた時代が終わり、それに代わる「我が子に自分の人生を切り開く力を身に付けさせる教育」を求めるようになったと思う。つまり、権威よりも実力が求められる時代の到来となったといえよう。


プロフィール


森上展安

森上教育研究所(昭和63年(1988年)に設立した民間の教育研究所)代表。中学受験の保護者向けに著名講師による講演会「わが子が伸びる親の『技』研究会」をほぼ毎週主催。

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