2012(平成24)年首都圏中学入試の結果と分析[中学受験合格言コラム]

今年の首都圏中学入試は、受験者数前年対比94.7%で、昨年、一昨年に引き続き、受験者数の減少傾向は続いており、隔年現象を繰り返しながら小康状態となっている。全体的には傾向と言えないにしても、昨年ほど顕著ではないが受験者数前年対比はA~Cランク校が優勢でE~Gランク校が劣勢の二極化となっている。

学校種別(男子校・女子校・共学校)に分類してもう少し詳しく分析すると、Aランクの女子校はわずかな増加で、共学校は大幅な減少となっている。Bランクは減少が大きく、男子校と共学校に減少の原因がある。Cランクは増加している唯一のランクで、共学校の受験者増がその原因となっている。共学校では従来A・Bランクを志望していた生徒がCランクに流れたようだ。同様に、男子校のD・Eランクが増加しているのはBランクを志望していた生徒が流れたと言える。同じくF・Gランクを従来志望していた生徒もD・Eランクに流れたことでD・Eランクが急増したのではないだろうか。以上は「男の子は、難関・上位ランクが狙えるのに安全を考えて志望校のランクを落として受験する生徒が多かったが、逆に、女の子はチャレンジするタイプに受験が多かった」という複数の塾の話に裏付けされている。

付属進学で(大学の)付属校・進学校・半付属校に分類して分析すると、今年は、全体的に付属校の受験者数が大幅に減少しており、受験者数減少局面では優勢となるはずのA~Cランク校で全体の平均よりも減少している。特にAランクの減少が激しく、「早慶が減少している。学費が高いことや大学全入時代にあえて中学校から付属を選ぶことを避けている可能性もある」という複数の塾の話に裏付けされている。しかし、昨年はA~Cランクの付属校が大幅に受験者数を増やしており、大震災の影響はあったにしても不況の影響は変わっていないので、受験者数が急増した翌年の受験者数が急減する隔年現象ではないかと思える。隔年現象ならば、来年のA~Cランクの付属校は急増することが予測できる。

学校の所在地で分類すると、千葉県は全体の受験者数前年対比88%と大幅に受験者数が減少している。すべての難易度ランクで平均の受験者数前年対比95%を下回っており、A・C・F・Gランクの減少は激しい。埼玉県は全体の受験者数前年対比99%で最も受験者数の減少が少なく、100%を超えた地域はなかった。昨年は、茨城県が全体の受験者数前年対比が最も高く、神奈川県が最も低かった。また、一昨年は、神奈川県が最も高く、東京都が最も低かった。このように、受験者数が増減する地域は毎年変わっており、原因はわかりづらいというのが通例だが、今年は「千葉県の受験者数が減少しているのは、大震災や原発事故によるものだろう」という明確な原因がある。表を見てもらうと、これまで話した難易度ランク・学校種別・付属進学・所在地の相関がわかりやすいと思う。


【受験者数前年対比 難易度ランクと学校種別・付属進学・所在地の相関】


注1)難易度ランクA~Hは四谷大塚の偏差値。65以上はA、64~60はB、59~55はC、54~50はD、49~45はE、44~40はF、40未満はG、Hは非エントリー校
注2)「半付属校」とは、系列大学への推薦進学が30~69%の学校


プロフィール


森上展安

森上教育研究所(昭和63年(1988年)に設立した民間の教育研究所)代表。中学受験の保護者向けに著名講師による講演会「わが子が伸びる親の『技』研究会」をほぼ毎週主催。

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