「和食」が無形文化遺産に登録
「和食 日本人の伝統的な食文化」が、2013年12月、ユネスコ無形文化遺産に登録されました。伝統的な日本の料理は、年中行事や季節、地域との関わりが深く、栄養のバランスにも優れているなど、さまざまな特徴を持っています。もともと「食」は、中学受験でも出題されやすいテーマであり、今後、さらに問われるようになると予想されます。そこで今回は、和食について解説していきましょう。
クイズde基礎知識
推薦理由は?/「ごまめ」に込められた願いは?/和食の栄養バランスのよさを表す言葉は?/山梨県の郷土料理は?/2015年に食の国際博覧会が開かれるのは?
時事問題を学ぶきっかけになる題材をクイズ形式でご紹介します。基本情報の整理に、親子で時事問題について話題にするきっかけに、入試・適性検査対策に、お役立てください。
Q1
「和食」の無形文化遺産への推薦理由は、主に4つあります。「新鮮な食材と調理」「優れた栄養バランス」「年中行事との関わり」と、あと1つは?
A.味のおいしさ
B.食糧問題解決への貢献
C.自然の美や季節の表現
A1 正解は 「C.自然の美や季節の表現」 です。
和食の無形文化遺産への動きは、2011年、農林水産省主催の検討会の開催により本格的にスタートし、2012年、文化審議会での審議を経て、「和食;日本人の伝統的な食文化」と題して、日本政府からユネスコに登録の申請書が提出されました。そこでは「和食」の特徴として、以下の4点が挙げられています。
・新鮮な食材と調理:各地で地域に根差した多様な食材が用いられ、素材の味わいを生かす調理技術・調理道具が発達している。
・優れた栄養バランス:動物性油脂の少ない食生活を実現し、日本人の長寿、肥満防止に役立っている。
・自然の美や季節の表現:季節の花や葉などで料理を飾り付けたり、季節に合った調度品や器を利用したりして、季節感を楽しむ。
・年中行事との関わり:自然の恵みである「食」を分け合い、食の時間を共にすることで、家族や地域の絆を深めてきた。
特定の料理ではなく、自然を尊重する日本人独特の精神が表れた日本の食全体にまつわる文化・習わしこそが「和食」であり、それが世代を超えて受け継がれて、地域やコミュニティーの結び付きを強めていることを推薦の理由としたのです。2013年に開かれたユネスコの政府間委員会の審査でも、そうした点が世界の多様な文化のひとつとして評価され、無形文化遺産への登録が決まりました。
Q2
おせち料理の一つ「ごまめ」には、どんな願いが込められている?
A.子どもがたくさん生まれますように
B.健康に暮らせますように
C.作物がたくさんとれますように
A2 正解は 「C.作物がたくさんとれますように」 です。
和食は、日本の伝統行事と密接に結び付いています。その代表といえるのが、正月に食べるおせち料理です。おせち料理とは、もともと、正月(1月1日)だけでなく、年5回の節句にも、家内安全、健康、子孫繁栄、豊作、豊漁などを願って、縁起のよい食べ物を神様にお供えしていました。それが今では、特に正月の料理を指すようになったのです。
おせち料理の、「ごまめ」とは、カタクチイワシの幼魚を干したものです。イワシは昔、畑の肥料として使われていました。このため、ごまめは「田作り」とも言われ、作物がたくさんとれますようにという願いが込められています。その他、おせち料理にはさまざまな意味が込められています。
Q3
栄養バランスに優れた和食の特徴を表す言葉としてよく使われるのは?
A.一汁三菜
B.二汁三菜
C.三汁三菜
A3 正解は 「A.一汁三菜」 です。
和食は栄養バランスに優れた食事だといわれています。そのバランスを保つのに大きな役割を果たしているのが「一汁三菜」の考え方で、汁物(みそ汁など)1品とおかず3品(主菜1品+副菜2品)を指し、主食のごはんとの組み合わせが、日本人の食生活の基本となっています。
たんぱく質(P)、脂肪(F)、炭水化物(C)の三大栄養素がバランスよくとれているかどうかを表す指標を「PFCバランス」といい、たんぱく質15%、脂質25%、炭水化物60%が理想とされます。一汁三菜とごはんを組み合わせた食事をとることで、このバランスを高めることができると言われます。
「ごはん+一汁三菜」の食事が広く行われていた1980年頃は、日本のPFCバランスはきれいな三角形を保っていました。しかし、最近は、食事が洋風化した結果、PFCバランスが崩れてきており、改めて「ごはん+一汁三菜」の食事のよさが見直されています。
日本のPFCバランスの推移 | アメリカのPFCバランス |
FAO Statistics Yearbook(日本のみ食料需給表)を参照に、栄養バランスが良いとされるP(炭水化物)50~70%、F(脂質)20~30%、C(たんぱく質)10~20%の範囲が0.8~1.2に収まるように指数化
農林水産省『和食ガイドブック 日本人の伝統的な食文化』より
http://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/culture/
Q4
次のうち、山梨県の郷土料理は?
A.三平汁
B.ほうとう
C.ばち汁
A4 正解は 「B.ほうとう」 です。
日本の国土は南北に長く、海、山、里と表情豊かな自然が広がっています。このため、各地で地域に根差したさまざまな食材を用いた郷土料理が受け継がれています。
「ほうとう」は山梨県の郷土料理で、打った後ねかさずに、すぐに切った生の麺を、野菜と一緒に味噌仕立ての汁で煮込んだものです。米作りに適さず、蚕を飼って絹糸をとって暮らしていた山間部で、蚕のえさとなる桑の収穫の後、麦を栽培していました。その麦を麺にしてつくったのが始まりで、戦国時代の武将・武田信玄が自らの刀で食材を切ったことから「宝刀(ほうとう)」と名付けられたとも言われています。
Aの「三平汁」は北海道の郷土料理で、塩漬けなどにした魚と、保存の効く野菜を煮込んだものです。北海道ではサケ、タラ、ニシンなどの魚がとれ、冷蔵庫がなかった時代には、保存するために塩漬けなどにしていました。魚についた塩だけで味が付くので、他の調味料は使わないのが基本です。名前の由来は、始めた人の名前とも、有田焼の三平皿に盛るからともいわれています。
写真:
(社)全国学校栄養士協議会
Cの「ばち汁」は兵庫県の郷土料理で、そうめんを細く伸ばした時に切り落とされる両端のUの字になった部分を、ゆでずにそのまま湯の中に入れて食べるものです。「揖保の糸」の名前で知られるそうめんの名産地であることから生まれました。切り落とされた端の部分の形が、三味線をひくのに使う「ばち」に形が似ていることから名前が付いたと言われています。
〔参考〕
農林水産省「見てみよう!日本各地の郷土料理」
http://www.maff.go.jp/j/syokuiku/kodomo_navi/cuisine/
Q5
2015年「地球に食料を、生命にエネルギーを」をテーマに国際博覧会が開かれるのは?
A.ミラノ(イタリア)
B.リオデジャネイロ(ブラジル)
C.東京
A5 正解は 「A.ミラノ(イタリア)」 です。
2015年5月1日~10月31日に、イタリアのミラノで国際博覧会が開かれます。テーマは「地球に食料を、生命にエネルギーを」で、サブテーマとして、食料の安全、保全、品質のための科学技術の他、農業と生物多様性のための科学技術、食育、食と文化、食の協力と開発などが掲げられています。
日本政府は、農林水産省、経済産業省を幹事省、国土交通省を副幹事省、独立行政法人日本貿易振興機構(ジェトロ)を参加機関として正式に参加し、「日本館」を出展。「Harmonious Diversity -共存する多様性-」をテーマに、「日本の農林水産業や食をとりまく様々な取組、『日本食』や『日本食文化』に詰め込まれた様々な知恵や技が、人類共通の課題解決に貢献するとともに、多様で持続可能な未来の共生社会を切り拓く」というメッセージを伝えていきます。サブメッセージは、「いただきます、ごちそうさま、もったいない、おすそわけの日本精神が世界を救う」です。(農林水産省・経済産業省発表より)