教育のプロが指南するしつけ論 「気配り、マナー、社会常識」を
「今どきの若い者は……」という言葉は、どの時代でも言われてきたことだが、それでも昨今の若者の振る舞いに戸惑うことはないだろうか。安田教育研究所の安田理氏に、子育てにおける「しつけ」について話を伺った。
***
ある日、バスに乗っていたところ、私立中学のバッグを持った男子生徒が優先席に座りました。彼はソフトクリームを食べており、食べ終わったあともそのまま座り続けています。目の前に大人が立っていても気にかける素振りもなく、スマートフォンをいじっていました。
また、仕事で関係のある人から最近の大学生の話を聞きました。彼の話によれば、夏に合宿をしたところ、大学生が入ったあとの風呂場は、おけや椅子が散乱していました。「自分が使ったものはきちんと片付けるのがマナーである」という話をしたところ、「片付けは旅館の人の仕事ではないのですか」「それ(片付け)も宿泊料金のうちに入っているのではないですか」という言葉が返ってきて、あぜんとし、虚脱感に襲われたそうです。
以前と比べると、学校教育における「しつけ」の比重は大きく低下しています。それどころか、「しつけ」を打ち出すと、今の保護者には敬遠されてしまいますから、学校教育では難しくなっています。昔の保護者が子どもに公共心とかマナーとかを身に付けさせることを子育ての中心に置いていたのに対し、今は勉強が最大の関心事ですから、その違いも大きいでしょう。
少々勉強ができるより、社会常識がある、礼儀作法が身に付いている、気配りができる……そういったことのほうが社会生活ではよほど有用であると思います。勉強も大事ですが、頭が働く、体が動く、気配りができるといったお子さまに育てていただきたいと願います。