最近の日本の経済の話題を振り返る
2012年末に民主党から自民党へ政権交代してから、安倍政権が新しい経済政策を打ち出し、円安になったり、株価が大きく変動したりといったニュースが大きく取り上げられています。こうした日本の経済に関する出来事は、中学入試でよく問われるテーマです。そこで今回は、日本経済の最近の話題について振り返っていきましょう。
クイズde基礎知識
安倍政権の経済政策は?/経済政策の目標は?/経済政策のひとつとして正しいのは?/為替レートや株価はどうなった?/TPPの参加国として正しいのは?
時事問題を学ぶきっかけになる題材をクイズ形式でご紹介します。基本情報の整理に、親子で時事問題について話題にするきっかけに、入試・適性検査対策に、お役立てください。
Q1
2012年に発足した自民党の安倍政権が打ち出した経済政策は?
A.コンクリートから人へ
B.アベノミクス
C.脱原発
A1 正解は 「B.アベノミクス」 です。
日本は近年、物やサービスの売り買いが積極的に行われず、物やサービスの値段が下がり続けるデフレーション(デフレ)状態が続き、経済成長が低く抑えられていました。アベノミクスは、こうした経済状況を脱却して、物やサービスの値段が上昇するインフレーション(インフレ)状態をもたらし、高い経済成長を導くことをめざした経済政策です。
Aの「コンクリートから人へ」は、2009年の総選挙で民主党が掲げた経済政策で、むだな公共事業費を抑えて、社会保障や子育て支援などに充てることをめざしました。Cの「脱原発」は、原子力発電所を廃止し、核エネルギーに依存しない電力供給体制を構築することで、2011年の福島第一原発事故などを契機に、民主党政権は脱原発の方針を打ち出していましたが、安倍政権は原発再稼働を容認する方向です。
Q2
安倍政権の経済政策で目標とされたのは?
A.物価上昇率2%
B.物価下降率2%
C.物価の現状維持
A2 正解は 「A.物価上昇率2%」 です。
安倍政権が打ち出した経済政策は主に3つあり、「三本の矢」と呼ばれます。その1つとされるのが、「大胆な金融緩和」をめざす「金融政策」で、具体的には「物価上昇率2%」が目標とされました。
「金融政策」とは、市場に流通するお金の量を調整して経済に影響を及ぼす政策のことで、「金融緩和」とは、市場にたくさんのお金が流通することをめざす金融政策を指します。お金がたくさん流通すると、1円の価値が下がって物価が上昇します。すると、早めにお金を使って物を買ったほうがいいと考える人が増えるので、経済も成長するというのがねらいです。
金融政策は、日本銀行(日銀)によって行われます。安倍政権の意向を受けて就任した日銀の黒田東彦(はるひこ)総裁は、「これまでとはまったく次元の違う金融緩和策を行う」と語り、国債を市場から大量に買い入れるなどして、日銀から市場に供給するお金の量を2年間で2倍に拡大することを発表しました。
Q3
安倍政権の経済政策のひとつとして正しいのは?
A.公共事業の増加
B.公共事業の減少
C.公共事業の現状維持
A3 正解は 「A.公共事業の増加」 です。
安倍政権の経済政策の三本の矢の1つに、「機動的な財政政策」があります。「財政政策」とは、国のお金の使い道などを通じて経済に影響を及ぼす政策のことで、安倍政権は、道路や建物などをつくる「公共事業」を増やすなどの財政政策によって、経済を成長させようとしています。
そうした期待の半面、懸念されるのは、公共事業に必要なお金が、国債によってまかなわれることです。国債とは、国が不足したお金を補うために国民に買ってもらう債権のことで、国の借金のようなものです。日本は既に多額の国債を抱えており、大きな問題となっています。今後、アベノミクスの効果で景気がよくなれば、国の収入である税金が増え、借金も返せますが、税金が増えなければさらに借金が増えることが懸念されているのです。
なお、アベノミクスの「三本の矢」のうち「大胆な金融緩和」「機動的な財政政策」以外のもうひとつは「成長戦略」で、グローバル競争に勝ち抜ける製造業を復活し、付加価値の高いサービス産業を創出する「日本産業再興プラン」などが示されています。
Q4
安倍政権の経済政策が打ち出された2012年末から2013年5月にかけて、為替レートや株価はどうなった?
A.円高・株高
B.円安・株安
C.円安・株高
A4 正解は 「C.円安・株高」 です。
その国の通貨が他国の通貨と比べてどれくらいの価値があるのかを示す基準を為替レートといいます。為替レートの状況は「円高」「円安」などの言葉で表され、「円高」とは円の価値が上がったことを表し、「円安」とは円の価値が下がったことを示します。
アベノミクスが打ち出される前は、歴史的な円高が進んでいました。円高になると、海外の製品を安く買えるなどのメリットがある半面、海外では日本の製品が高くて売れなくなり、売れたとしても海外のお金を円に替える時にもうけが減るため、輸出産業の多い日本経済にとっては大きな打撃となっていました。
アベノミクスは、市場にたくさんのお金(円)を流通させる政策なので、その期待から、円高から円安へと状況が転換しました。これが、輸出産業を中心に、停滞していた日本の企業の成長への期待につながり、日本の企業の株が買われて、株価が全体的に高くなる「株高」が進みました。
円安・株高の傾向は、2013年5月頃には円高・株安へと変わりましたが、アベノミクスが打ち出される前に比べると、円安・株高になっています(2013年8月末現在)。
Q5
次のうち、TPPの参加国として正しいのは?(2013年8月末現在)
A.アメリカ
B.中国
C.韓国
A5 正解は 「A.アメリカ」 です。
TPPは、「環太平洋戦略的経済連携協定(Trans-Pacific Partnership)」の略です(「環太平洋パートナーシップ協定」「環太平洋経済協定」などともいいます)。そのねらいは、太平洋を取り巻く国々の間で、輸出をする国が輸入をする国に対して払わなければならないお金(関税)をやめることで、貿易を盛んにすることです。
TPPは、2006年にシンガポール、ニュージーランド、チリ、ブルネイの4か国の間で始まり、その後、アメリカ、オーストラリア、ペルー、ベトナム、マレーシアなども加わりました。日本も、こうした国々から参加を求められてきました。
TPP参加国(外務省「環太平洋パートナーシップ(TPP)協定交渉概要」より)
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/tpp/pdfs/nego_gaiyo.pdf
TPPに参加すれば、輸出産業にとっては海外の市場が開拓できるメリットがありますが、その半面、海外の安い製品が入ってきて自国の産業が打撃を受ける可能性や、食の安全面からの不安などが指摘されています。このため、日本でも、農業分野などから反対の声が根強かったのですが、安倍政権はアベノミクス促進などのねらいから参加を決断し、2013年7月から交渉に参加しました。中国や韓国は参加していません(2013年8月末現在)。