高校の本当の実力って? 大学合格者ランキングだけではわからないこと
高校は、「通過点」としてではなく、3年間の学校生活自体に意義があるはずだが、最近では大学に合格させる力ばかりがクローズアップされる傾向がある。なぜだろうか。高校教育の現状に詳しい、安田教育研究所の安田理氏にお話をうかがった。
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ある私立高校の校長先生が、「高校受験の世界がどんどん情報化され、単純化が進んだ。学校側も耳目に届きやすい言葉等で自らをくくり、学校教育本来の持つ役割が捨象されてしまっている」と話していました。
実際、マスメディア等で頻繁に大学合格者ランキングが扱われ「大学に合格させる力=私立高校の教育力」ととらえる傾向が強まっています。実際に、前年春の大学合格実績が翌年の受験者数に顕著に跳ね返ります。学校側も難関大学に合格させることに力を入れざるを得ません。
公立高校でも、大学合格実績を上げることに力を入れていて、都府県の教育委員会自体が特定の学校を「進学指導重点校」(東京都)、「進学指導特色校」(大阪府)などに指定しています。このような動きは全国に広がっていますが、難関大学への合格実績によって「指定」が外されることもあるため、高校自体が競争させられているような状況です。
保護者の意識もますます「高校=大学への通過点」という「循環回路」に入っています。いい大学に進ませること自体は意味のあることですが、高校は、「通過点」ではなく、在学する3年間そのものに大きな意味があります。それは、難関大学合格者数・偏差値という数字からはわかりません。学校の中身にも関心を持っていただきたいものです。