公立中高一貫校の受検者数は増加しているか[中学受験]
首都圏の国立と私立の中高一貫校(以降「国・私立」と称す)の受検者数は、リーマンショックの影響で2009年以降、減少し続けている。しかし、そのような状況の中で、公立中高一貫校(以降「公立」と称す)は学費が安いため、むしろ不況がプラス要因となって、受検者数は増えると考えるのが普通である。しかし、果たして本当に「公立」の受検者数は増加しているかどうか調べてみた。
グラフ1は首都圏の「国・私立」と「公立」の2008~2012年の受検者数をまとめたものだ。「国・私立」は、リーマンショックに端を発する不況の影響で、2009年以降は受検生が明確に減少している(実際には小6人口や新規開校の影響を除くと2008年から減少し始めている)。それに対し、公立小計を見ると「公立」は2008年以降、受検者数は増加し続けている。
ここで、「公立」には新規開校した学校が多いが、その要素を排除しても受検者数は増加しているのか、という疑問がわいた。一般に、新規開校の学校では、初年度の倍率は高い、と考えられているためである。そこで、グラフ1のように、首都圏の「公立」18校を「2008年以前から存在している公立中高一貫校」11校と「2009年以降に新規開校した公立中高一貫校」7校に分けて集計した。グラフを見ると「2008年以前から存在している公立中高一貫校」11校の受検者数は、思ったとおり2010年まで減少し、その後2年間は横ばいとなっていた。それに対し、「2009年以降に新規開校した公立中高一貫校」7校は、増加し続けている。しかし、実際は、毎年のように新規開校される学校の受検者数が増加に貢献しているだけで、新規開校した学校は、2年目以降の受検者数では「公立(2009年以降の新規開校)」同様、減少しているのではないだろうか。
グラフ1 首都圏の一貫校受検者数の推移
(「国・私立」「公立」の比較と「公立」の内訳)
「公立」の受検者数が減少しているように見えるのは、新規開校時の合格倍率が高すぎたために、開校2年目以降は受検者数が減少しているためと考えられる。そこで、開校1年目から4年目までの「公立」の合格倍率を調べてみることにした。グラフ2は、新規開校から4年でどれだけ合格倍率が増減したのかについて、首都圏の「私立」と「公立」で調査した結果をまとめたものだ。「私立」では、開校1年目~4年目まで、ほぼ2倍程度で推移し、合格倍率は、ほぼ一定となっている。しかし「公立」は、開校1年目は平均で12倍という高倍率だが、2年目は9倍ほどに緩和され、3年目以降は6倍強に収束する。せいぜい5~6倍でなければ敬遠してしまう、受検生と保護者の心理が働いて2年目までは受検者数が減少し続けた結果、「公立」は2008~2010年に減少し、その後横ばいになったことになる。不況の影響はなかったという結果になるのである。
受検生とその保護者が「公立」をめざすのであれば、開校3年目以降の、合格倍率で6倍程度の中学校を志望校の基準にするとよいだろう。
グラフ2 首都圏一貫校合格倍率の推移
(公立と私立の比較 2008~2011年)