教育方針とは何か[中学受験]
教育方針と言っても、具体的には何を指すのだろうか? 学校案内を見ると、『教育方針』の項目で示すことが学校ごとに異なり、用語も異なる場合も多く、自校の教育方針を明確に定義していない学校もある。独自性をアピールするためか、学校ごとの特徴に焦点を当てているので、教育方針の一部が強調されることもある。このように、学校案内に書かれている『教育方針』は他校と比較できないことが多いので、受験生・保護者が「教育方針はわかりにくい」というのも無理はない。
教育方針とは何か、定義をしてみよう。教育方針は、「教科や学習に関する教育」と、「人間性や能力に関する教育」に大きく分けられる。そのほかに体力、健康や安全に関する教育もあるが、学校が行うべき常識になっているのか、学校案内にも載っていないことも多い。教科や学習に関する教育には、受験生・保護者が最も興味を持っている大学受験に対する受験指導も含まれる。
教育方針の中でも、受験指導を重視する保護者がほとんどとなっている。それを受け、進学校の学校案内では受験指導に焦点を当て、教材・カリキュラムや学校独自の指導法、さらにその結果としての大学合格実績に学校案内のページを割いている。また、大学合格実績で学校の偏差値が決まるので、受験生・保護者だけでなく学校も受験指導を重視する傾向がある。
また、人間性や(人の)能力に関する教育は、一般的には人間教育と言われ、伝統的な女子校や宗教系の学校では、従来は受験指導よりも重視してきた。しかし、人間教育を強調しても、それでは受験生が増えないということもあって、人間教育と受験指導を同じウエートとして指導する教育方針を設定している学校が多いようだ。人間性や能力に関する人間教育は、学校では道徳の授業で指導するだけではなく生活指導などでも行われる。学習指導要領を見ると、道徳は人間性、つまり心に関する教育が主で、能力に関する教育は少ない。しかし、文部科学省は、新学習指導要領の全体を通じて、社会のニーズと子どもの現状に対応するため「生きる力」を育むという理念を掲げている。これは、学力や人間性ともに思考力・判断力・表現力などの「能力」の育成を重視することを意味する。
人間性の「ゆとり」から脱却し、学力の「詰め込み」でもない、次代を担う子どもたちが、これからの社会において必要となる能力を文科省は「生きる力」という言葉で表現している。
ある学校(仮にK校とする)では、文科省が奨励する以前から「能力」の育成に注目し、学校行事を教材として取り組んでいる。グラフを見ると、中1から高3で各能力が着実に向上していることがわかる。しかも、行事で身につけた「能力」を活用し、高校の最後の課題として志望大学合格を目標とし、それを達成するため、生徒自身が主体的に取り組んでいる。大学合格実績が急上昇していることから考えると、人間教育で受験指導ができることを示している。
【社会的能力「5段階」評価 学年による推移(K校の例)】