わかりやすい学校案内(パンフレット)とは? [中学受験]

最近の学校案内は、写真がほとんどのページを占めている。つまり文字が少ない。わかりやすいという意味では写真のほうがわかりやすいのかもしれない。特に、「志望校を決めるのは受験生本人」というご家庭が3分の2であることを考えると、子どもにもわかりやすいという意味では優れているのかもしれない。しかし、デザインと写真だけの学校案内は、どれも同じようになる。学校案内を並べてみるとよく似たものが多いことがわかるだろう。
というのも、学校に決定権はあるものの、デザインと写真の候補を選ぶのは業者で、有力な業者は限られているため、どうしても同じ業者が複数の学校の学校案内をつくることになるからだ。同じようなデザインと写真の学校案内では、学校の教育方針や校風すら明確な違いを表現することができず、逆にわかりにくくなるとも考えられる。

学校案内を作成する学校は、どのように作成方針を考えているのだろうか? わたし自身、学校から依頼されて、学校案内の製作に関わったことがある。もちろん、これは一例だろうが、学校案内がわかりにくくなる要因の一つとして、わかりやすくすることで学校の権威が落ちることを心配する学校もある。また、学校は学校案内を生徒募集のための広告媒体の一部と考えている。そのように考えれば、受験生や保護者に学校をできうる限り理解してもらおうという考え方よりも、いかに学校を魅力的に見せるかということになる。難しい用語を使うことで高尚な学校であると思わせたい心理が働くのかもしれない。嘘はないかもしれないが、学校にとって不利なことは、言葉にしないほうが安全だ。
少なくとも、どこにも非がなく、しかも誇大広告とならない学校案内にしたいと考えれば、写真のイメージで良い印象を与え、競合他校と横並びの特徴のない学校案内になりがちだ。このように、写真の多い学校案内は、学校の事情によるところもあるのではないか。

受験生の保護者に聞いてみると「写真が多いほうがわかりやすいので良い」という意見と「もっと文章を多くして、しっかり説明してもらいたい」という意見に二極化する。しかし、本当に、写真だけで、学校の中身はわかるのか。志望校選定で受験生保護者が最も重視する学校の教育方針や校風は、写真だけではわからないのではないか。
当初の目的は、受験生や保護者に学校案内をわかりやすくするために、文字を少なくし、写真の多い学校案内となったのだろう。しかし、あまりにも学校を説明する文章が少なくなれば抽象的な表現となり、同じ業者が作成した学校案内はデザインも写真も似たようなものが多くなる。その結果、確かに読みやすくはなったかもしれないが、似たような学校案内ばかりになって、肝心の学校の違いがわかりにくくなってしまったのだろう。わかりやすい学校案内を目指したはずが、実際にはわかりにくくなってしまっているのではないか。


プロフィール


森上展安

森上教育研究所(昭和63年(1988年)に設立した民間の教育研究所)代表。中学受験の保護者向けに著名講師による講演会「わが子が伸びる親の『技』研究会」をほぼ毎週主催。

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