ノートや日記の字が雑で困る[教えて!親野先生]

教育評論家の親野智可等先生が、保護者からの質問にお答えします。

【質問】

ノートや日記の字が雑で困っています。ゆっくり書けば上手に書けるのですが、速く書くとダメです。「もっとゆっくり丁寧に書きなさい」と言っても反省の色ナシ。この前も日記の宿題があったのですが、ものすごい勢いで書いていたので字もひどいものでした。雑なのは書き直させたほうがいいでしょうか?

ブロッコリーさん(小6男子)

【親野先生のアドバイス】

拝読しました。
親としては子どもの字は気になりますよね。

丁寧で上手な字であれば、本人も読みやすいですし、先生の覚えもめでたいでしょう。
ですから、できるだけ丁寧かつ上手である方に超したことはないのですが、それにこだわりすぎると別の問題も出てきます。

丁寧かつ上手に書くためには、ゆっくり書かなければなりません。
硬筆書写の勉強として書く、お礼の手紙を書く、提出書類を書くなどの場合は、その方がいいですし、そうしなければなりません。

でも、それ以外でいつもそうである必要はありません。
というのも、速く書いた方がいい場合もあるからです。

例えば、楽しかったことを日記や作文に書いているときなど、書きたいことがどんどん湧いてくるので、ゆっくり丁寧に書いていては間に合いません。
あるいは、授業中に何かの問題について書きながら考えているときや、テストの勉強のために書きながら覚える作業をしているときなどもそうです。
こういうときは、グイグイ書いた方がいいのです。

他にも次のような場合があります。

・授業中に友達の発表や先生の説明を記録する
・社会見学で説明されたことをメモする
・ふと思いついたアイデアを忘れないようにメモする
・漢字を覚えるために繰り返し書く
・算数の問題を解くために繰り返し計算する

これについて、授業の名人として有名だった有田和正先生はいつも「鉛筆の先から煙が出るように速く書きなさい」と子どもたちに指導していました。
言い得て妙ですね。
私も有田先生の授業の動画の中で、子どもたちが猛烈な勢いで書いている場面を何度か見たことがあります。

ということで、まずは、いつもゆっくり丁寧に書かなくてもいいのだということを頭に入れておいてください。

次に、とはいえ、ゆっくり丁寧に書くべきときもあるということも触れておかなければなりません。

それは硬筆書写、テストの回答、そして「先生に提出する物」などです。
この中で、「先生に提出する物」については少し説明がいります。
本当は、「漢字を覚えるために繰り返し書く」ときは速く書いた方がいいのです。
その方がしっかり頭に記憶できます。

もし大人であるあなたが「薔薇」という漢字を覚えたいと思ったら、ある程度の速さで何回も書くはずです。
あるいは、鉛筆を持たずにテーブルに指で繰り返し書いて、覚えようとするかもしれません。
硬筆書写のようにゆっくり丁寧に書いて覚えようとはしないはずです。

でも、子どもが、先生に提出する書き取り帳はゆっくり丁寧に書いたほうがよいのです。
その方がしっかり勉強していると評価してもらえるからです。
そして、これは先生だけでなく親もそう評価します。
日本では、書道や書写の影響によって、とにかく美しい字を評価する傾向が強いのです。

ということで、漢字を覚えるためには本当は速く書いた方がいいのですが、先生も親も子どもの書き取り帳を見て速く書いてある字を見ると叱りたくなってしまうのです。
ですから、先生に提出する書き取り帳はゆっくり丁寧に書いた方がいいというわけです。

子どもが理解できる年代になったらこういう事情も教えてあげればTPOに合わせて、うまく使い分けられるようになると思います。

日記や作文についても同じです。
これらは字のことよりも中身の充実度の方がはるかに大切です。
先生や親が字の丁寧さにこだわりすぎていると、思い切りグイグイ書けなくなってしまい、中身がないつまらないものばかりになる可能性があります。

ですから、子どもが書いた日記や作文を読んだら、字のことを叱るのではなく、中身を大切にしてあげてください。
具体的に言えば、書かれている気持ちに共感したり、ユニークな表現をほめたりすることが大切なのです。

ご質問に「雑なのは書き直させたほうがいいでしょうか?」とありますが、それはやめたほうがいいでしょう。
書くこと自体が嫌いになってしまう可能性があるからです。

もしどうしても字のことが気になるなら、日記の中身について共感したりほめたりした後で、比較的よく書けている字を10個くらい選んでそれに花丸をつけてあげればいいでしょう。
そういう加点主義的な方法のほうがお互い気持ちがいいと思います。

私ができる範囲で、精一杯提案させていただきました。
少しでもご参考になれば幸いです。
みなさんに幸多かれとお祈り申し上げます。

プロフィール

親野智可等

親野智可等

教育評論家。23年間の教員生活のなかで、親が子どもに与える影響力の大きさを痛感。その経験をメールマガジンなど、メディアで発表。全国の小学校や、幼稚園・保育園などからの講演に引っ張りだこの日々。

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