模擬試験の結果が戻ってきたら(1)模擬試験、どう活用する?[高校受験]

■前半は学習内容の定着度を確認

模試を受ける意味は、大きく分けて2つあります。
・志望校の「合格の可能性」を探ること。
・これまでの学習内容の定着度をみること。
前者については言うまでもありませんから、ここでは後者について解説します。

模試の結果が返ってくると、ほとんどの保護者のかたは「合格の可能性」と「偏差値」に注目します。そして「受験校を変更したほうがいいかも……」「もっと上を望めるのでは……」といったことばかりを考えがちです。
しかし、それは11月以降の結果で検討してください。10月までは、我が子は「どの教科が弱いのか」「特にどの単元なのか」をチェックして、弱い教科、弱い単元を克服するにはどうするか、お子さまと話し合って対策を立ててください。どの教材をどのように活用して復習するか、スケジュールを含め、具体的に決めることが大切です。

模試の結果を受け取ると、学校ごとの合格可能性が表示されているので、受験校を早く決めたくなります。が、お子さまの実力はいくらでも伸びます。早い時点の学力で、受験校を決める必要はありません。



■偏差値偏重にならない

保護者のかたが「偏差値」という言葉を使う時、2通りの使い方をしています。
一つは、模試で「うちの子の偏差値は60だった」という言い方、もう一つは、「○○高校の偏差値は65くらい」という言い方です。

同じように使われていても、我が子の偏差値の場合は、受けた模試によって毎回大きく変わるため、保護者にも変化するものという認識があります。したがって、我が子の偏差値については、あまり固定的にとらえず、いちばんいいときの偏差値を、我が子の偏差値として挙げる保護者のかたが少なくありません。

一方、学校の偏差値も、その模試でその学校を志望している受験者の成績から予想した偏差値なので、当然毎回異なる可能性があり(個人の偏差値ほどは大きくは異なりませんが)、別の模試なら、まったく違う数字になって当然といえます。ところが、学校の偏差値については、固定的にとらえている保護者のかたが実に多いのです。

学校の偏差値も年度によって変動しますし、「コース制」の学校では、コースによっても大きく違います(1つの学校で15もの偏差値幅がある学校もあります)。
偏差値表を見ると気付くと思いますが、「スーパー特進コース」といった名称がついている学校が、伝統校より上の位置にあったりします。偏差値というのは、あくまで試験を突破するうえでの難しさなので、細かくコースを分けて定員を狭めれば上昇するものなのです。

一方伝統校は、試験回数を細かく分けず1回の試験で選抜しているため、定員が多い分、偏差値は低めに出ます。しかし、学校としての長い伝統、生徒を育てるノウハウの蓄積、さまざまな学校文化は、やはり貴重なものです。こうしたことは偏差値表からはわからないことです。

これから頻繁に偏差値表を見るようになると、いつのまにか保護者のかたの頭の中に偏差値ランキングが刷り込まれ、偏差値が高い学校ほどいい学校だという認識になりがちです。
模試には偏差値がつきものですが、偏差値偏重にならないように今のうちから気を付けるようにしましょう。


プロフィール


安田理

大手出版社で雑誌の編集長を務めた後、受験情報誌・教育書籍の企画・編集にあたる。教育情報プロジェクトを主宰、幅広く教育に関する調査・分析を行う。2002年、安田教育研究所を設立。講演・執筆・情報発信、セミナーの開催、コンサルティングなど幅広く活躍中。
安田教育研究所(http://www.yasudaken.com/)

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