2011年度入試で何が問われたか<国語>

首都圏主要校の2011年度国語入試問題の分析結果をもとにした、平山入試研究所・小泉浩明先生による国語入試の出題傾向と今後の対策についての解説です。
(以下は、2011年5月に開催された森上教育研究所主催「わが子が伸びる親の『技』研究会」セミナーでの講演を抄録したものです。)
※分析対象:首都圏の私立・国立中学校を中心に86校、173問題を分析


■2011年度 国語入試のポイント

大きく、3つのポイントが挙げられます。
 (1)「実力差の出やすい問題作り」へ
 (2)「考えさせる国語」へ
 (3)国語の時事問題化
以下、この3つのポイントについて解説していきます。



(1)「実力差の出やすい問題作り」へ

いくつかの学校で、「超難解な問題文」から「難しい問題文」への変化が見られました。「問題文」が、これまでより比較的易しく、読みやすいものに変わったのです。ただ、問題文が長文化した傾向も見られ、論説文や説明文でも長い文章を取り上げる学校が増えました。「超難解」な問題文よりも、比較的読みやすい長文のほうが、より実力差が出やすいためと考えることができます。

また今年度は、「記述問題」や「選択肢問題」が増加し、「抜き出し問題」が減少した傾向も見られました。抜き出し問題は、問題文の中に正解を見失ってしまう場合があり、実力差が比較的出にくいタイプの出題形式ですので、このことからも各学校が「実力差の出やすい問題作り」になってきているといえます。

問題文の長文化への対策のひとつに、「頻出テーマ」に関する知識の習得が挙げられます。中学校入試では、取り上げられるテーマがある程度決まっているので、これらのテーマについての知識を持っていれば、問題文が読みやすく、問いに答えやすくなります。以下のグラフに挙げた12のテーマで、今年度の問題文全体の約70%を網羅しています。

「自然・環境」「言語・コミュニケーション」「文化習慣」「文芸論」などのテーマは、論説文での頻出テーマですので、基本的な知識を身に付けておくことが大切です。

(2)「考えさせる国語」へ

かつての「読み・書きの国語」から、「考えさせる国語」に変化していく流れを感じます。国語の技術(読み・書きなど)を確かめるだけではなく、その技術を使って考える問題になっています。

慶應義塾湘南藤沢で出題された、与えられた条件のもとで「対語」を考えさせる問題や、早稲田大学高等学院中等部で出題された、論理学における「後件肯定のあやまり」について説明し、選択肢からその例を選ばせる問題などからも、「試験場で初めて出合う問題」に対処する力が試されていることが読み取れます。

このような種類の問題への対策として、問われていることを具体化、あるいは一般化して考えることができるようにすること、また、自分で手を動かして考えをまとめるなど、筆者の言いたいことを自分なりに整理し記述できるようにすることが大切です。

(3)国語の時事問題化

今年度、桐朋では問題文に、植村花菜の『トイレの神様』(小説)が取り上げられました。また、これまでは頻出テーマになかった「弱者・病人」をテーマとした文章を問題文として取り上げた学校が数多く見られました。


<「弱者・病人」をテーマとした問題文の例1> 栄光学園 大問1

取り上げられた問題文は、鈴木賢一『子どもたちの建築デザイン - 学校・病院・まちづくり』からの文章。ユニバーサルデザインの体験学習の様子などから、「人が」優しいまちづくりについて考える問題など。

<「弱者・病人」をテーマとした問題文の例2> 本郷(第1回)大問2

取り上げられた問題文は、立岩真也『希望について』からの文章。「美しく死ぬこと」や「尊厳な死(尊厳死)」の問題をとおして、生き方について述べた論説文を読んで答える問題。

時事問題化の対策としては、社会の動きに興味を持ち、それに関する知識を持つことが大事です。たとえば今年度頻出した「弱者・病人」であれば、「弱者・病人」について知ることから始め、問題点をまとめたりその対策を考えたりして、知識を広げていくということです。

プロフィール


小泉浩明

桐朋中学・高校、慶応大学卒。米国にてMBA取得後、予備校や塾を開校。現在は平山入試研究所を設立、教材開発など教務研究に専念。著作に「まとめ これだけ!国語(森上教育研究所スキル研究会)」などがある。

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