自由に書く場合に、飛躍しすぎてしまう[中学受験]

平山入試研究所の小泉浩明さんが、中学受験・志望校合格を目指す親子にアドバイスする実践的なコーナーです。保護者のかたから寄せられた疑問に小泉さんが回答します。




質問者

小4男子(性格:論理的)のお母さま


質問

物語文の自由記述問題では、登場人物の心情や背景を想像しすぎてしまい、単純な解答ができないことが多いようです。「このときの姉の気持ちを20字以内で答えなさい」などという問題に「妹の帰宅が遅いことを心配する気持ち。」程度に解答すべきところ、問題文にはない、「事故ならすぐに迎えに行こうと思う気持ち。」などのように本人になりきって、≪自分ならどう思うか≫という視点で解答しています。抜き出しの場合などは正確にできますが、自由に書く場合に、飛躍しすぎてしまうようです。気持ちはよくわかっているので、理解が足りないというより、入り込みすぎているように思います。国語自体は比較的得意ですし、読書量も多いと思います。


小泉先生のアドバイス

受験国語の「ルール」であると説明すればわかりやすいと思います。

いわゆる「深読み」するタイプで、物語の内容と自分の思いが重なると、すごい得点をマークするのですが、外れるとガクッと落ちてしまう傾向があると思います。中学受験の国語では、「論理性」や「客観性」が求められます。6年生以降は特に、論理的な解き方でないとなかなか得点できないような問題になります。今のうちから、客観的なものの見方に慣れておくことが必要です。

「自分ならどう思うか」という視点は、問題を解く最初のステップの一つとしては悪くはありません。問題は、そのアイデアを支えられる「根拠」が本文にあるかということです。お子さまからの答えが出て来たら、それが「正解」「不正解」を問わず、本文のどこを根拠にしているかを常に確認しましょう。そして根拠がない場合は、「そういう考え方も可能かもしれないが、根拠がない場合は正解にはできない」ことを明確に伝えてください。子どもによっては、意味がわからず、腹を立てるケースも出てくるかもしれません。そんな場合は、それが受験国語の「ルール」であると説明すればわかりやすいと思います。

サッカーでも野球でも、ルールがあってこそゲームは成り立ちます。たとえば、グラウンド内で手を使える選手はキーパーだけというルールを守らなければ、サッカーの試合は成り立たないのです。これと同じように、受験の国語でも、「本文を根拠にする」ことがルールであるとすれば、それが好きか嫌いかは別としても、それに従わなければ点数にならないことは理解できると思います。そして、ルールがはっきりすれば腹も立たないでしょう。まずはこのことを明確にしてください。特にお子さまの場合は、論理的な性格ですから、ルールであることがわかれば案外すっきりすると思います。

それからもう一つ。ルールは理解できても、つい主観的にものを見てしまう場合は、客観的なものの見方を練習すると良いでしょう。ときどき中学入試にも出てきますが、絵や写真を見せて、それを文章で客観的に説明させるという練習です。
たとえば「公園で、親子がブランコで楽しそうに遊んでいる」という写真があったとします。主観的にはそのような記述でも良いのですが、客観的にはいくつかの問題がでてきます。「そこは公園なのか?」「二人は親子なのか?」「本当に楽しそうなのか?」などなど、客観的に見れば断言できない事がらがたくさんあります。その場合は、「公園」→「広場」「親子」→「女の子と女の人」「ブランコで楽しそうに遊んでいる」→「ブランコをしている」などと表現を変えることで客観的な文章を作成することができます。

何回か練習することで、客観的な記述の意味も理解できるようになり、客観的な表現も可能になると思います。論理的な考え方や客観的な見方は、中学生以降とても大切になりますから、受験を機に身に付けていかれると良いでしょう。


プロフィール


小泉浩明

桐朋中学・高校、慶応大学卒。米国にてMBA取得後、予備校や塾を開校。現在は平山入試研究所を設立、教材開発など教務研究に専念。著作に「まとめ これだけ!国語(森上教育研究所スキル研究会)」などがある。

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