キャリアデザインと受験教育[中学受験]

キャリアデザインは、中学生の総合学習の時間に行われる、将来について考えさせる学習だ。キャリアデザインは、「キャリア」という言葉がついていても仕事だけではなく人生設計のことなのだ。もちろん仕事は人生の中で重要な要素を占めているが、あくまでも人生の要素のひとつである。ライフデザインとキャリアデザインとは同義語で、学校によってはライフデザインと呼んでいることも多い。
具体的なキャリアデザインの指導はさまざまで、生徒が将来就きたい職業を自分でイメージできるように、生徒に興味のある職業を調べさせてレポートを書かせる学習や、具体的な仕事の内容ややりがいなどを知ってもらうために著名人や卒業生を呼んで話を聞く学習もある。

近年、キャリアデザインに力を入れている学校が多い。それには理由があり、注目すべきことは、キャリアデザインを受験勉強と結び付けて指導した結果、生徒の受験勉強に対するモチベーション向上に成功して、大学合格実績を急上昇させている学校が増えているということだ。特に人気の女子校でそのような傾向が見られる。過去10年間で急激に偏差値を上げた女子校は、大学合格実績が急上昇した学校が多く、その中にはキャリアデザインで成功したと思われる学校も多く含まれている。

一見、受験勉強とは無関係であるように思えるキャリアデザインを、どのように受験勉強と結び付けたかを簡単に説明する。学校によって結び付け方は多少違うかもしれないが、キャリアデザインの学習で将来の仕事を考えさせる。次に、その仕事に就くためには、どのような大学、学部、学科で学ぶ必要があるかを考えさせ、ひるがえって今何をするべきかを子どもたちに考えさせる気付きの教育にしたのだ。つまり受験勉強をすることで将来の夢である仕事に就く可能性を高めることができると気付かせるのだ。
誰でも強いられると反発する。特に、生徒は勉強を強制されれば条件反射で反発しがちなので、自分で気が付くようにしてあげたほうがモチベーションを高める効果は高い。

キャリアデザインを行っている学校は多いが、キャリアデザインと受験教育を結び付けて生徒のやる気を引き出すようにシステム化されているかを見極めるべきだ。システム化されていれば、先生の指導力によらず、生徒の誰もがやる気を引き出してもらえる。
学校案内を見れば、キャリアデザインについての取り組みが書いてあると思うが、キャリアデザインでどのように生徒のやる気を引き出すかが書いてある学校は、大学合格実績だけでなくいろいろな面で子どもを成長させてくれると思う。キャリアデザインは単に生徒の将来を考えてみさせるだけの教育ではない。


プロフィール


森上展安

森上教育研究所(昭和63年(1988年)に設立した民間の教育研究所)代表。中学受験の保護者向けに著名講師による講演会「わが子が伸びる親の『技』研究会」をほぼ毎週主催。

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