オープンスクールで子どもに見極めさせたいこと[中学受験]

保護者がオープンスクールで見極めたいことは「我が子に合った学校」かどうかということが多いようだが、子どもに見極めさせたいことは何か? も考えておくべきだ。子どもは、人生経験が少なく学校を選ぶ基準は小学校の体験程度で、人生の目的もまだ明確ではないことから、どのような学校が自分に合っているか判断がつかないと考えるべきだ。子どもをオープンスクールに連れて行く目的を考えてみると、ひとつは志望校を自分の目で見て、自分で決めることで受験勉強に対し現実的な目標を持たせ、やる気を出させることがある。もうひとつは、「ここなら、やって行ける」と子どもが安心できる志望校を選ばせることだ。

入学した学校が合わないという問題の原因は、もちろん第1志望に入れなかった不本意入学もあるが、子どもが何も考えずに保護者の選定した学校に進学したケースにも多い。環境が変わることで、すべてが自分にとって好ましいことになるとは限らない。嫌なことも起こりうる。
そんな時に、我慢できるかどうかは(1)自分の意思で選んだか、(2)選ぶ時にどれだけ考えたか、によるのだ。つまり、自分で決めた学校だからという(1)の要素と、あれだけの学校を何回も考えて決めたのだからという(2)の要素で、子どもは前に進むことができる。保護者が何回も学校に足を運んでも、明確に「我が子に合った学校」か、どうかわからないケースは多い。しかし、「あれだけ何回も見て、考えて決めたのだから……」という気持ちになるところまでやれば後悔はないはずだ。子どもにも同じように考えさせる必要がある。

子どもをオープンスクールに連れて行くときは、必ず保護者が事前に学校を訪問して、本当に志望校の候補にしてもよいと思える学校だけに子どもを連れて行くべきだ。もしも、保護者が志望校にしたくない学校を、子どもが気に入ってしまったら、その学校を受験するかどうかで親子で摩擦が起きる可能性が高い。これでは、オープンスクールに子どもを連れて行って、子どもに志望校を決定させることで受験勉強にやる気を起こさせようとする努力が無駄になるばかりか逆効果となってしまう。
子どもには、「自分に合った学校」かどうかを見極めるだけの経験値はないと考えるべきだが、「やって行ける学校」かどうかを見極めることはできると思う。しかし、子どもは一見楽しそうな「やって行ける学校」を「自分に合った学校」と勘違いして志望校としてあこがれてしまうこともあるのだ。

オープンスクールで子どもに「自分に合った学校」を見極めさせることは難しいと思うが、少なくとも、「やって行ける学校」かどうかを見極めることはできる。「やって行ける学校」と安心でき、「志望校は、自分の目で見て、自分で考えて決めた」と自信を持って言えるような学校ならば、入学後に嫌なことがあったとしても「学校が合わない」と学校を否定するのではなく、自分の力で乗り越えて行けると思う。


プロフィール


森上展安

森上教育研究所(昭和63年(1988年)に設立した民間の教育研究所)代表。中学受験の保護者向けに著名講師による講演会「わが子が伸びる親の『技』研究会」をほぼ毎週主催。

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