難易度が予想しにくい中学受験[中学受験]

中学受験で第1志望校から第3志望校までの組み合わせを見ると一貫性がない場合が多く見られる。男子校・女子校または共学校なのか? 付属校または進学校なのか? 早稲田なのか慶応なのか?
大手中学受験塾の先生の分析では、「最近は、志望校にあまりこだわりはない受験生・保護者が増えているようです」という分析がある。結果として、女子校と共学校、付属校と進学校、早稲田と慶応を混合して受験する受験生が多い。「子どもが気に入っている学校ならば、将来子どもがちゃんとした大学に進学できれば良い」「合格できるということが重要で、日程などを考慮し、少しでも有利な組み合わせにする」というのが親の心理なのではないか?
たとえば、付属校にこだわりがあるならば、中央大学付属と早稲田大学高等学院中が新設されたことで、同じレベルの付属校の受験者数が減少するという影響が出るはずだが、実際には、付属校だけでなく、同じレベルの進学校にも少なくない影響が出ているようだ。結果として、学校の志願者がどのように動くかが読みにくくなり、難易度の予想が難しくなった。

2010(平成22)年の中学校入試では中央大学付属と早大学院が注目され、前評判も高かった。しかし、受験者数・受験倍率は予想よりも低かった。新設の学校はどの程度の難易度になるか、特に前評判が高い場合は、受験者が殺到し倍率が極端に高くなるのではないかと不安になる心理が働いたのだと思う。塾関係者も、これほど易しくなるとは思わなかったというのが本当のところだろう。来年中学受験を目指す受験生・保護者も同様の心理となるとすれば、来年は、隔年現象で難易度が上がることが予想できる。もちろん、新設校の受験者数・受験倍率は予想しにくいのであくまでも「可能性が高い」ということと理解してもらいたい。

しかも、隔年現象で難易度が上がることが情報として浸透すれば、難易度が変わらないまたは下がることもある。学校の入試難易度の予想は、マスメディアで発表されたものと逆になることがよくあるが、それは、その情報を得た受験生・保護者がその情報と逆の動きをするからなのだ。たとえば、大手塾の入試予想の専門家が、ある学校の難易度が下がるという予想をマスメディアで公表すれば、その予想を知った受験生・保護者がチャンスと考えて受験者数が増え、結果として難易度が上がってしまうのだ。
また、中学受験では、募集人数が少ない入試も多く、受験者数が少し増減しただけで難易度が大きく変わることがあるのだ。対処方法としては、隔年現象だけでなく、新設校などのように難易度が予測しにくい入試では、複数の学校に受験票を出すことで、受験直前に倍率を確認してから受験する学校を決めればよいだろう。


プロフィール


森上展安

森上教育研究所(昭和63年(1988年)に設立した民間の教育研究所)代表。中学受験の保護者向けに著名講師による講演会「わが子が伸びる親の『技』研究会」をほぼ毎週主催。

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