【回答:森上教育研究所】家庭学習・家庭内コミュニケーション<その5>

「中学受験は親子の受験」とも言われ、保護者のかたの役割はとても大きいもの。受験準備が進むにつれて、心配事や気がかりもいろいろ出てくるでしょう。よくある相談事例について、専門家の先生がたや、合格家庭の先輩保護者のアドバイスを集めました。

学習計画はどのように立てればいいですか?

もっと勉強に本気になってほしいのですが…

親が教えると最後はケンカになってしまいます

学習計画はどのように立てればいいですか?

4年生の息子がいます。5年生から塾に行くことを考えて、それまでは家庭学習でやっていくつもりです。学習スケジュールの立て方について、アドバイスをお願いします。計画をせっかく立てても、途中であきてしまい、計画倒れになってしまうことがよくあります。無理がなく、しかも子どものヤル気が出るスケジュールを、どうしたらつくれるのか教えてください。
「子どものヤル気が出るスケジュール」といっても、スケジュールの立て方によって、子どものヤル気が出るかどうかは疑問です。スケジュールのためのスケジュールになってしまっては、ヤル気が出ないので、途中で挫折してしまいます。
スケジュールは、目標を達成するために立てるものです。スケジュールを立てる前に、具体的な目標を設定していますか? 緊張感をもたせるためにも、目標を設定し、目標を達成するためのスケジュールを作ることが必要です。そして、目標は、本人が達成したいと願うことにするべきです。
次に、目標は本人の実力を考えて、簡単に達成できる程度ではなく、かといってあまりにも困難ではないというレベルにしたほうがいいでしょう。簡単に達成できる目標では、本気になれず、ヤル気も半減します。また、あまりにも困難な目標では、初めからあきらめてしまいます。

そうはいっても、家庭学習では、親子のなれ合いもあって、子どもをヤル気にさせることは大変だと思います。まだ小学4年生では自覚をもてといっても無理がありますが、本人に目標を決めさせることで「自分の問題」という自覚も生まれ、ヤル気につながるのではないでしょうか。
そのためには、模擬試験の成績で、子どもにとって頑張れば達成できそうなことを具体的な目標とするのが良いと思います。子どもが外部からの刺激を受けることにもなりますので、家庭学習での緊張感のなさを解消する効果も期待できます。

もっと勉強に本気になってほしいのですが…

小学校5年の次男は、中学受験予定です。今年長男の中学受験が終わり、お兄ちゃんの受験を端で見ていたせいか、受験に対して消極的。塾にも一応行ってはいますが、わりとのんびりした雰囲気の塾で、親の方はやきもきしています。このムードを断ち切って、本人自ら受験勉強をがんばってほしいと思っているのですが、何かいい方法はないでしょうか?
受験に消極的な原因は何か?子どもの個性や置かれている環境によるところが大きいのですが、いただいた情報だけではなんとも言えません。しかし、受験に消極的な原因を見つける方法ならばお話できると思います。子どもが受験に消極的であるという問題がある場合、原因はいくつもあるのが普通です。問題に大きな影響を与える原因や小さな影響しか与えない原因もあると思います。また対処が難しい原因や簡単に対処できる原因もあるはずです。「問題に大きな影響を与える原因を突き止めて時間をかけてでも解消すること」と「簡単に対処できる原因を突き止めすぐに対処すること」を行ってください。
文面から見ると (1)お兄ちゃんの受験を端で見ていたこと (2)わりとのんびりした雰囲気の塾に通っていること が原因として考えられますが、他にも原因があると思います。お子さんと話し合って原因をつかんでください。さらに原因がわかれば解決策も考えられます。
また、受験に消極的な原因を解消するだけではなく、子どもの受験に対するモチベーションを高めるために、志望校を決め、学校訪問を行い、中学の学校生活に夢をもたせるという流れで、目標をもたせることも同時に行うべきかと思います。

親が教えると最後はケンカになってしまいます

5年生の子どもの保護者です。この2月から進学塾に通い始めたのですが、塾の家庭学習が一人ではなかなか進まなくて困っています。親が横についてやり始めると、つい感情的になってしまい、最後はケンカになってしまいます。どうしたらいいのか、アドバイスをお願いします。
肉親が教えるとお互いに遠慮がないので、なかなかうまく家庭学習ができません。親がつい感情的になる気持ちは分かります。予備校の人気講師が「わが子に家庭で受験指導をしているが、いつもけんかになってしまい、『もうお父さんには教わりたくない』と言われてしまいましたよ」と話していたことを思い出します。親子でうまく行っているケースを考えると (1)家庭学習の意義をお互いに納得すること (2)お互いに先生と生徒に徹すること (3)子どもの方から教えを請うようにすること (4)家庭学習を日常生活に組み込み習慣化すること などがキーポイントになるようです。
何故、感情的なるかを考えてみてください。子どもがなかなか理解できない、進まないという中で、親も子もストレスを感じている状況で、遠慮のない一言が喧嘩の原因となることが多いと思います。親子でよく話し合い「家庭学習を親子で行うと効率が良いことを確認し合おう」「しかし、お互いに遠慮がないとストレスがたまるので、先生と生徒に徹して、まず言葉遣いや態度等の形から入ろう」「なるべく子どもの方から働きかけ、やらされ感をなくそう」「毎日コンスタントに無理なく学習しよう」などの意見の一致をお互いにもつと良いと思います。先生と生徒の他人行儀な会話は、最初は多少抵抗があるかもしれませんが、このような家庭学習が子どもにとって有利であることを親子で認識すればできるはずです。

プロフィール



中学受験と私塾、中高一貫の中等教育と私学を対象とする調査・コンサルティング機関。私塾に『中学受験研究』、私学に『私学中等教育』を月刊で発行している。「わが子が伸びる親の『技(スキル)』研究会」を主催している。

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