【回答:日高のり子・森上教育研究所】志望校選び<その10>
「中学受験は親子の受験」とも言われ、保護者のかたの役割はとても大きいもの。受験準備が進むにつれて、心配事や気がかりもいろいろ出てくるでしょう。よくある相談事例について、専門家の先生がたや、合格家庭の先輩保護者のアドバイスを集めました。
親目線では気づかない注意点、親が心掛けるべきことなどを教えてください
「伝統校」と「新設校」の相違点は?
学校の個別相談会では、どのような質問ができますか?
親目線では気づかない注意点、親が心掛けるべきことなどを教えてください
Q | 志望中学を見学して実際に入学したが、校風と合わなかったため、高校進学せず受験し直したという体験例や、中学生が通学する(特に電車で通学する場合)ときの注意点など、親目線では気づかないことや、親が体験してこなかった今の時代だからこその問題点などを教えてください。 また、偏差値だけで学校を選ぶのではなく、わが子の中高6年間を託す学校を選ぶにあたって、親が心掛けるべき点とは何でしょうか。 |
A | 【森上教育研究所】 私の知り合いの帰国子女で、中学から都内の著名な女子校に入学したものの、1年もしないうちに退学してしまい、その後は、家の近くの公立中学に転校しましたが、不登校になってしまった例があります。この帰国子女の例は、海外での学校生活が子どもの性格と非常に合ったことで、子どもの中で理想とする校風の基準ができてしまい、日本で入学した中学の校風が、基準となる海外の学校とは180度違ったことが原因でした。 校風が合わないための退学や高校での再受験は、帰国子女だけではなく、通常の中学受験でも起こります。保護者が気に入っても子どもの性格に合わない場合は、不登校や成績不振に陥り退学や高校での再受験につながります。転校や再受験をしても、その後、うまくいったケースは少なく、むしろ親子で苦しむかたが多いようです。子どもは、自分に向かない学校は直感的に見分けられる場合が多いので、学校見学と志望校の最終決定に子どもも加わることができるようにしてあげると、志望校選定を誤ることが少なくなるでしょう。 通学時に注意すべきことは、古くて新しい問題ですが、寄り道ではないでしょうか? 初めは買い食いやウインドーショッピングを楽しむ程度ですが、繁華街に出入りするようになると問題です。昔も繁華街は恐ろしい誘惑にあふれていましたが、誘惑の内容は今の親が体験したことがないため理解できないことかもしれません。 【日高のり子さん】 月〜土まで授業や部活がある学校に通わせて思うことは、子どもは家で過ごす時間より学校で過ごす時間のほうがずっと長いということです。そこの居心地が悪ければ、毎日がとてもつらいものになってしまいます。 子どもの性格と学校の雰囲気、家庭の教育方針と学校の教育方針など、肌で感じることと考え方に、学校と家庭の中で同じものがあるということが、その子に合っている学校なのだと思います。 通学時に注意することは、乗り換えの通路も含めた通学路でしょうか。ゲームセンターなどで、子どもに声をかける悪い大人がいると聞き、そこもきっちりチェックしました。 |
「伝統校」と「新設校」の相違点は?
Q | 御三家といわれる「伝統校」と、設立は比較的新しいが毎年受験者数が飛躍的に伸び、偏差値を確実に上げている「新設校」(渋谷教育学園、広尾学園、西武学園文理など)について、教育方針、校風、大学進学状況などを含めて、相違点について教えてください。 |
A | 【森上教育研究所】 2007年6月にどのような学校が継続的に大学受験合格実績を伸ばしているか? また、その共通点は何かを調査するため、首都圏の私立中高一貫校(161校)に対してアンケートを行いました。合格実績を伸ばしている学校はどのようなことを行っているか、詳細な分析をしましたが、明確な傾向はつかめませんでした。それまでは、自己評価の設問は、信頼性が乏しいので分析はしませんでしたが、アンケートの設問にあった学校の生徒・教務・運営の自己評価と合格実績の伸びの関連性を分析しました。 極端なデータを除き、大学受験合格実績を急激に伸ばしている学校とそれ以外に分けて生徒・教務・運営の要素を分析したところ、合格実績が急伸している学校は“生徒のモチベーション対策”と“組織”に自信があることが明確になりました。 ほとんどの学校が、多少の増減はあるものの横ばいで推移している中で、継続的に合格実績を大幅に伸ばしている学校は161校中5校と少なく、比較的設立が新しいか、学校改革を最近行って学校名を変更した、四谷大塚の偏差値で62〜63の「新設校」が4校と偏差値54の「新設校」が1校で、伝統校はありませんでした。 つまり、「伝統校」と合格実績を伸ばし続けている「新設校」の相違点のひとつは、「伝統校」に比べ「新設校」は“生徒のモチベーション対策”と“組織”に自信があること、になります。 【日高のり子さん】 すべての学校の説明会に参加したわけではありませんが、比較的新設のある学校の説明会で、特別クラスと普通クラスの東大合格率について、普通クラスが特別クラスを上回ったそうで、その理由として、特別クラスの生徒は6年間を通じて難問や多量の課題に取り組み続けることで、息ぎれが生じてしまったのではないかとおっしゃっていました。 そのあたりをどうしていくかが、今後取り組まねばならない課題だとの言葉に、正直で前向きな印象を受けました。 伝統校には、良いと思うものは取り入れつつ伝統を守っていくという柔軟な学校と、何があってもスタイルを変えるつもりはないという学校がありました。 |
学校の個別相談会では、どのような質問ができますか?
Q | 学校の個別相談会では、どこまで聞いていいのでしょうか。例えば、宿題の量やPTAに関すること、行事参加などについて質問はできますか? |
A | 【森上教育研究所】 学校の個別相談会では、相手の学校や先生によほど失礼でない限り、どのような質問・相談をしてもよいと思います。そのための個別相談会ですから、どのような内容でも親御さんが真剣に悩んでいるのならば、先生がたは誠意をもって対応してくれるはずです。 個別相談会は、学校が生徒募集の一環として行うものですから、受験生の保護者からの質問・相談に回答できなければ意味がありません。学校としても、その場で即答できなければ印象が良くないので、よくある質問・相談は事前に回答を用意しているはずです。また、先生は、個別相談会で受験生・保護者に良い印象をもってもらえるように回答しようと努めているので、学校としては話したくない内容でも感じよく対応してくれるはずです。 つまり、個別相談会は学校にとっても、受験生の保護者とのコミュニケーションの場であり、なるべく多くの保護者からなるべく多くの質問・相談を得たいと考えているのです。「宿題の量やPTAに関すること、行事参加など」は、学校や先生に失礼な質問・相談ではなく、むしろ、喜んで回答してもらえる質問内容だと思います。 もちろん、個別相談会に参加する前には、その学校の学校案内を熟読する必要があります。学校案内を読んでもわからないことを質問・相談すべきで、明らかに学校案内に書いてあることを質問するのは、避けたほうがいいです。 【日高のり子さん】 どんなことでも疑問に思ったことは、聞いて大丈夫だと思います。 質問の際に、名前や住所など個人的な情報はいっさい聞かれることはありませんので、安心して質問してみてください。 |