テストでは正解をきちんと選んで解答するのですが、納得はいかない[中学受験]

平山入試研究所の小泉浩明さんが、中学受験・志望校合格を目指す親子にアドバイスする実践的なコーナーです。保護者のかたから寄せられた疑問に小泉さんが回答します。



質問者

小5男子のお母さま


質問

「主人公の気持ちはどれでしょう」などという問題が嫌いです。いろいろな考えや受け止め方があってもよいのではないか?という、本人なりの理屈があるようです。テストでは正解をきちんと選んで解答するのですが、納得はいかないようです。読書が好きで、曲がったことが大嫌いな子です。自分の考えにうそをついて正解を選ぶことは点数を取るには仕方のないこと、と伝えるのは親として心苦しいです。


小泉先生のアドバイス

納得がいくまで自分で考えるか、先生に質問すべき

まず、国語のテストに出題される問題は「正解が一つしかない」というのが原則です。「正解が一つになるように作られている」と言っても良いでしょう。どのように作るかと言えば、たとえば選択肢問題の場合は本文の内容と異なる選択肢を作ったり、選択肢に≪限定≫を付けたりするなどの「仕組み」を組み込むことが一般的です。そして、解答者は本文を根拠に論理的に正しい選択肢を選ぶことが求められます。
この点は、読書とは根本的に違うところです。読書であれば、お子さまの言うとおり「いろいろな考えや受け止め方があってもよい」のです。十人の読者がいれば、十通りの受け止め方があっても良いと言えます。国語で問題を解く時と読書で本を読む時の、この明確な違いをまずは十分に理解しましょう。

次は、納得がいかなかった時の対処。そんな場合は、試験のあとで納得がいくまで自分で考えるか、先生に質問すべきです。たとえば「この問題では選択肢アが正解となっているが、イも正解と言えるのではないか」という具合です。もちろんその根拠も示す必要はあります。おそらく先生は、「これこれこういう理由で、イは不正解だ」とお子さまが考えもしなかった理由を挙げて納得させてくれるでしょう。もちろん、お子さまの言い分が正しい場合もあるでしょう。たとえば、根拠が非常に乏しい問題や、根本的に根拠の作り方を間違えている問題の場合です。そんな時は、お子さまの勝ちです。そういう問題に対しては、先生も「この問題は設定がマズイ」と認めてくれるはずです。ただし、お子さまの言い分が正しいどうかもわかりませんから、試験の時は「正解と思われるほう」を「時間内」に選ぶことは大切です。

ところで、選択肢問題には「最適」という考え方がありますが、もしかしたらお子さまを困らせている可能性はあります。「最適」とは、たとえば「選択肢アとイを比べた場合、どちらかと言えばアのほうが正しい」ということです。このような選択肢は、選択肢問題を難しくするために作られます。絶対的に正しいものなら気分も良いのですが、「こういう理由で、こちらのほうを最適とする」と言われても、なんとなくすっきりしないかもしれません。
しかし、そんな選択肢問題でも「いい加減な問題」とは言えません。なぜならそのような問題にはおそらく、「最も適当なものを選べ」という条件が付いているからです。「最も適当」すなわち「最適なもの」を選ぶのですから、相対的に正しいものを正解として選んで良いのです。そして、「こちらのほうがより良い」という「最適」の考え方に慣れれば、自分の考えにうそをついているとは思わなくても済むようになるかもしれません。

お子さまは、とても「論理的」で「良い子」タイプですから、理屈としておかしなことや自分にうそをつくことを嫌がります。そしてこのような態度は、中学校入試にも非常に大切なものだと言えます。一つひとつをごまかさず、他の人の話にも耳を傾けながら論理的に積みあげていければ、国語はもちろん他の科目の成績も向上していくと思います。


プロフィール


小泉浩明

桐朋中学・高校、慶応大学卒。米国にてMBA取得後、予備校や塾を開校。現在は平山入試研究所を設立、教材開発など教務研究に専念。著作に「まとめ これだけ!国語(森上教育研究所スキル研究会)」などがある。

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