論説文の読解の問題ができません[中学受験]

平山入試研究所の小泉浩明さんが、中学受験・志望校合格を目指す親子にアドバイスする実践的なコーナーです。保護者のかたから寄せられた疑問に小泉さんが回答します。


質問者
小6男子のお母様

質問
論説文の読解の問題ができません。問題文は印をつけたり線を引いたりしながら読んでいますが、「筆者の主張は何か」というような問題で、的はずれな答えになります。

小泉先生のアドバイス
「対立」を見つけるという手法も良く使われます

「論説文で、筆者の主張がつかめたら半分は問題が解けている」と言って良いほど、主張をつかむことは重要です。しかし、論説文が苦手なお子さまには、なかなか難しい注文ではあります。たとえば「大切なところ(つまり主張や結論)に線を引きなさい」と言われても、どこが大切なのかがわかりません。結果として、≪ほとんど線を引けずに読み終えてしまうお子さま≫と、≪いたるところに線を引きまくるお子さま≫の2種類に分かれることが多いようです。そしてこのような状態から抜け出すためには、「論説文の大切なところはどこか?」の見つけ方をお子さまに教える必要があります。

論説文で大切なところは、筆者の「主張+結論」です。筆者はそれらのことを言いたいがために文章を書いたのです。そして「主張」は問題文の最初のほうに、「結論」は最後のほうにくることが少なくありません。ですから生徒には、「最初と最後に注目しなさい」と指導するのが一つの方法です。しかし具体例や引用から始まり、主張がやっと半ばに出てくる問題文もあります。また結論らしきものがない文章もあります。ですから、この方法をお子さまに教える時は、残念ですが、「そのような場合がわりと多い」という程度にしておくべきでしょう。

評論文は、「主張」や「結論」の他に「具体例」や「引用」などによって構成されています。ですから「主張」や「結論」を見つけやすくするために、文章中にある「具体例」や「引用」などを消し込むという手法もあります。「具体例」とは、筆者の主張や結論をわかりやすくするための「例」です。「引用」とは、故事・ことわざ、著名人の言動、あるいは他人の文章などを自分の文章の中に引いて用いることです。また、筆者が「体験したこと」が文章にある場合も消し込んで良いでしょう。

このような「具体例」「引用」「体験したこと」は思いのほか多いので、これらを消し込むだけで文章がかなりすっきりすると思います。なお、消し込みはマーカーを使うと視覚的にもはっきりしますから、マーカーでの消し込みをお子さまにぜひ実感させてあげてください。消し込まれず残った部分の中に「主張」や「結論」があることがわかれば、次からはマーカーでの消し込みをしないでも、大切なところに線を引く可能性がかなり高くなると思います。

大切なところを見つけるもう一つの方法として、「対立」関係を発見するという手法もよく使われます。それは論説文において筆者が自分の主張を述べる場合、自分の主張と「対立」するものを挙げて、比べて書くことが多いからです。たとえば「日本人の自然観=共生」について述べる場合、その対立するものとして「欧米人の自然観=支配」を持ち出して説明することがあるということです。もしお子さまが「対立」するものを見つければ、どちらかが筆者の主張の中心ですから、主張を見つけるかなりの手がかりになると思います。

ただし、場合によってはこの「対立」関係が無い文章もあります。また、逆に主張に関係した「対立」以外にも「対立」がある場合も有り得ますので、間違えないように注意しなければなりません。たとえば日本人の自然観の中で、「大人の自然観」と「子どもの自然観」という対立関係が述べられていても、筆者の主張と直接は関わりがないというようなことです。

以上、評論文で大切なところ、つまり「主張+結論」の見つけ方について説明してきました。どの方法も100%完全ではありませんが、それでも非常に役立つ手法であると思います。ぜひお子さまに教えてあげてください。

プロフィール


小泉浩明

桐朋中学・高校、慶応大学卒。米国にてMBA取得後、予備校や塾を開校。現在は平山入試研究所を設立、教材開発など教務研究に専念。著作に「まとめ これだけ!国語(森上教育研究所スキル研究会)」などがある。

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