外国人留学生の6割以上が日本での就職を希望

グローバル化は、日本人が海外に出ることだけではありません。多くの外国人が日本にやってきて仕事をするようになることも、グローバル化の一面です。日本学生支援機構の「私費外国人留学生生活実態調査」によると、外国人留学生の6割以上が卒業後、そのまま日本で就職することを希望しています。日本に来た留学生たちは、どんなことを望んでいるのでしょうか。

3分の1が「日本で永久に働きたい」

調査は2016(平成28)年1月、私費留学生7,000人を対象に実施し、6,036人(86.2%)から回答を得ました。回答者を教育機関別に見ると、大学院が19.3%、大学学部が29.9%、専門学校が17.2%、日本語教育機関が25.4%などです。

卒業後の進路希望(複数回答、以下同じ)は、「日本において就職希望」が63.6%、「日本において進学希望」が50.4%、「出身国において就職・起業希望」が20.0%などとなっています。日本での進学希望は、日本語教育機関の留学生に多いのに対して、日本での就職希望者は、大学・学部で69.9%、専門学校で74.8%に上っています。

日本で就職を希望する留学生のうち、就職後の将来として「日本で永久に働きたい」という者も31.6%と、約3分の1います。この他、「日本で働いた後、将来は出身国に帰国して就職したい」は37.8%、「まだ決めていない」が17.8%、「日本で働いた後、将来は日本、出身国以外で就職したい」が9.5%などでした。

日本での就職活動への要望では、「留学生を対象とした就職に関する情報の充実」が53.2%、「在留資格の変更手続きの簡素化、手続き期間の短縮化」が50.3%、「企業においてもっと留学生を対象とした就職説明会を開催してほしい」が36.4%など。また就職に当たっての不安は、「職場で良い人間関係を作れるかどうか」が50.4%、「自分の日本語が通じるかどうか」が49.0%、「希望する仕事につけるかどうか」が34.2%などで、在留資格や日本語などの問題を除けば、一般の日本人学生の悩みとあまり変わらないようです。将来、日本の一般学生と外国人留学生が就職活動を競うという時代がくるかもしれません。

実は非常に高い日本語習得のニーズ

外国人留学生の出身国・地域を見ると、中国が49.5%、ベトナムが12.9%、韓国が8.8%、ネパールが7.3%などで、アジア地域からの留学者が全体の95.1%を占めています。

日本に留学してよかったこととしては、「国際的な考え方、教養を身につけることができたこと」が67.3%でトップ。次いで「日本語が習得できたこと」が64.8%、「質の高い教育を受けられたこと」が54.6%、「日本人の友人ができたこと」が40.8%などの順でした。

文部科学省は大学のグローバル化を進めるため、英語による授業の拡大など求めていますが、外国人留学生のほとんどがアジア地域出身者であり、日本語習得や日本人の友人獲得などに意義を感じていることを考えると、現在の大学グローバル化政策は、やや的外れといえなくもありません。

実際、留学後に克服できなかった苦労として、「物価が高い」50.2%に続いて、「英語の習得」が21.5%に上っており、「日本語の習得」の16.7%を上回っています。現在の外国人留学生の多くが、日本語を学び、日本で就職したいと考えていることをもう少し考慮する必要があるのではないでしょうか。

※平成27年度私費外国人留学生生活実態調査概要
http://www.jasso.go.jp/about/statistics/ryuj_chosa/h27.html

(筆者:斎藤剛史)

プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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