ポスターに書くと良い内容を三つ書きなさい[中学受験]

平山入試研究所の小泉浩明さんが、中学受験・志望校合格を目指す親子にアドバイスする実践的なコーナーです。保護者のかたから寄せられた疑問に小泉さんが回答します。


質問者
小3女子のお母様

質問
読解の問題で「上の文章を読んで、主人公の気持ちを文章からそのまま書き出しなさい」という問題で、文章からそのまま書くのではなく、自分の主観などを含めて書いてしまいます。「問題をよく読みなさい」と常に言っているのですが、1年生のころからよく間違えていて一向に直りません。あと、「この文章を読んでポスターを作る場合、ポスターに書くと良い内容を三つ書きなさい」という問題で答えがまったく出てこなかったようです。

小泉先生のアドバイス
身近で具体的な例を使って学ぶことから始める

今回は、後半のご質問にお答えします。おそらくお子さまは、ポスターが「どんなものか?」とか、「どういう目的があるのか?」など今まで考えたことがなかったのでしょう。考えたことがなかったために実感がわかず、上記のような問いにも戸惑ってしまったのではないかと思います。
そんな場合は、ポスターについていろいろお話しするのも良いでしょうが、もっと身近で具体的な例を使って学ぶことから始めるのも良いと思います。たとえば新聞に折り込まれる「チラシ」などはどうでしょうか。お子さまの興味のありそうな商品が載っているチラシを使うと、さらに良いでしょう。お子さまは女の子ですから、たとえば楽器店のチラシを使ってみましょう。

まずお手元のチラシをお子さまと一緒に見ながら、「これは何だ?」とか「なんで新聞に入っているのか?」などと質問してみます。「折り込みチラシ」とか「ピアノ売りたいから」という答えがすぐに返ってこない場合は、ヒントを出して最後は答えを教えてください。
さてチラシの名前や目的をお子さまが理解したら、次はチラシに「何を書くと良いか」を考えてもらいます。実際にチラシを見ながらですから、とても考えやすいと思います。まず目につくのはたくさんのピアノの写真でしょう。それから、「こんなピアノが欲しい」と思ってもらうために、すてきなピアノの写真を載せていることに気が付くでしょう。写真とともに値段も載せてあることや、同時に特別価格を表示していることも見つかるかもしれません。

さて気に入ったピアノがあっても、やはり実際に見て、触ってみたいでしょうから、どこに行けばよいかを書いておかなければなりません。つまりお店の場所です。お子さま自身がチラシの下のほうにある地図を見て、「これは書くと良いもの」として見つけるかもしれません。あるいはお母さんが、「どこで買えるのかな?」などとヒントを出しても良いでしょう。またこういったチラシには、「今度の土日に決算在庫大処分セール」などと書かれている場合がありますから、この日付も「書くと良いこと」の一つとして挙げてもらいましょう。なかなか見つからない場合は、「ピアノを売りたいから」という目的をはっきりさせながら、どんどんヒントを出してあげてください。

さて具体的なチラシを材料に、チラシの「目的」であるとか「書くと良いもの」を挙げさせました。次は、それらを「一般化」してみます。すなわち「人に何かを伝える時は、『いつ・どこで・誰が・何を・どうする・どのように』を伝えると良い」と教えるのです。そして、チラシの内容と一つひとつ突き合せていきます。
「いつ:今度の土日」を書く。「どこで:お店の地図や電話番号」を書く。「誰が:ABC楽器店」を書く。「何を:ピアノ」を書く。「どうする:売ります」を書く。「どのように:決算在庫大処分セールなので安く」を書く、という具合です。これで「具体例」と「一般化」が一致しました。
そして「いつ・どこで・誰が・何を・どうする・どのように」をくり返し、≪呪文≫のようにお子さまに覚えてもらってください。そして覚えたら、早速この呪文を試してみます。すなわち、「ポスターを作る場合には何を書くと良いか」という最初の問題にもどります。

まず文章を読んでポスターの目的をはっきりさせましょう。ポスターにも、いろいろ種類があります。選挙のポスターなのか、商店街の大売り出しのポスターなのか、などにより書く内容は違ってきます。でも、「いつ・どこで・誰が・何を・どうする・どのように」という基本は同じですから、一つひとつお子さまに考えてもらうことは可能でしょう(ただし使わないものはあります)。
たとえば文章を読んで(文章の内容は勝手に想像しました)、「いつ:12月末」「どこで:駅前商店街で」「だれが:駅前商店街の店が」「何を:大売り出しを」「どうする:(大売り出しを)行う」「どのように:全品20%OFF・お買い上げ1,000円ごとにスピードくじが1枚引ける・1等なんとハワイ旅行!」などを、文章から抜き出すことができると思います。そうすると書くと良い内容は、「大売り出し」「12月末」「住所・地図・電話番号」「全品20%OFF」「1等ハワイ旅行付きのスピードくじ」などが思いつくはずです。具体的な例から導入しましたから非常にわかりやすく、しかも具体例だけではなく一般化したので、今後の応用も可能になったと思います。

このようにまずは具体的に、身近なものから入るとお子さんは興味を示しやすいと思います。またお子さんの好きなもの(たとえば今回はピアノ)を例にすると良いでしょう。そして具体的なものがつかめたら、それをさらに「一般化」できれば応用力が付きます。機会があれば、このような教え方を試してみてください。

プロフィール


小泉浩明

桐朋中学・高校、慶応大学卒。米国にてMBA取得後、予備校や塾を開校。現在は平山入試研究所を設立、教材開発など教務研究に専念。著作に「まとめ これだけ!国語(森上教育研究所スキル研究会)」などがある。

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