偏差値 その1「高校偏差値は+10?」[中学受験]

先日、筆者の著書の読者というかたからご質問をいただいた。著書の中で紹介した、入口の入りやすさに比べて出口の良さの光る、ある学校についての話。
「大変お買得な学校だと思ったので併願校にして受験しようと考えているのだが、この『出口の良さ』は中学校の実績ではなく高校のそれではないか。だとすれば、この学校は高校から入学してくる生徒が多く、高校の偏差値が高いところのようなので、中学入試の偏差値で入口の入りやすさを比べてみてもあまり意味がないのではないか」というご指摘であり、かつそう考えて良いか、ということだった。
そこで気づいたのだが、世の中の高入生のイメージはまだまだ一昔前にとどまっているという感じなのである。

具体的に説明すると、その中学校の入学者の平均偏差値は48である。一方、その高校の合格基準偏差値は最も高いコースのもので62である。そこは中学募集が60名くらいで、高校募集は全コースで300名ほどだ。良くわからないが、その最もレベルの高いコースの募集人数は、せいぜい中学募集に毛の生えた程度のものだろう。この偏差値は一見すると高校がはるかに高く見えるものの、母集団(もとにする集団)が違うので単純には比較できない。
そこでわずらわしいことはさておいて、比較する単純な方法は高校入試偏差値から10を引くことだ。すなわち高校入試の合格基準偏差値62-10=52、ただしそれは合格基準であって入学者平均ではないから、これもまた大雑把な経験則で3を引く。52-3=49。つまり中学入試の入学者平均とほぼ変わらなくなる。

つまり中学入試も高校入試もレベルはそう変わらないということになる。
あとはその中入生の大学合格実績と高入生のそれとのパフォーマンスの比較になるが、これもやってみると中入生のほうがGMARCH(学習院、明治、青山、立教、中央、法政)実績では少々高いパフォーマンスになり、高入生のそれを上回る。著書には中入生(中学で入学した生徒)、高入生(高校で入学した生徒)の別なく合算で出ているので、高入生の合格率はこれを下回ることになる。
中高一貫コースのほうが6カ年も教育投資をしているのだから、高校3カ年だけよりパフォーマンスが上でなくてはならないのが道理。その意味ではかろうじて及第点の学校ということになる。

今の時代、中高一貫のパフォーマンスのほうがまずは上になるという視点を持っておきたい。

プロフィール


森上展安

森上教育研究所(昭和63年(1988年)に設立した民間の教育研究所)代表。中学受験の保護者向けに著名講師による講演会「わが子が伸びる親の『技』研究会」をほぼ毎週主催。

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