2学期の心得(2) 良いときは動かない[中学受験]

二つ目の心得は、「良いときは動かない」ということ。
まず「成績が上がっている」というのは、実にまれな状態であると考えてほしい。他の生徒も同じように必死になって勉強しているのだから、少しくらいの努力ではせいぜい現状維持がいい所であろう。
ましてや少し気を抜くとガクッと下がってしまうのが、偏差値の厳しいところである。

しかしお子さまの努力の結果、少しずつでも偏差値が上向きになる時期があったとすれば、そのときはなるべく学習方法や状況を変えないことを心がけるべきである。

混ぜては危ない!
ところが「良い勉強法がある」とか「良い問題集がある」と聞くと、一つでも多く身に付けたくなってしまうのが人間の性(さが)である。
結果、お子さまに過剰な学習を課すことになり、最悪の場合は肉体的、精神的に崩れてしまうことがある。

あるいはいろいろな先生が、いろいろなことを言ってくるかもしれない。
同じ塾でも教科によって言ってくることは違うから、当然「良いとこ取り」になるが、これがかえって危ない場合がある。

中学受験のプロの先生方であれば、言っていること自体は決して誤りではないであろうが、先生方の数だけ勉強法も存在する。
なかには学習方法に相反する考え方もあるから、良いと言われる勉強法すべてを吸収しようとすると抱えきれず混乱してしまう場合もある。
トイレの洗剤ではないが、「混ぜては危ない!」のである。お子さまやご両親が良いと信じたやり方を選んで、やりとおすということが合格への近道であろう。

ときには「ステル」
ところで、何か一つに絞るということは、当然、他のものを捨てなければならない場合がある。取捨選択は親主導で行う場合が多いだろうが、ご両親がお子さまの性格や勉強法との相性を考えて、最良の方法を選んであげることが大切だ。

このように2学期に充実した学習をするには、何かを「ステル」ことがどうしても必要になる。そして何を「ステル」かは、受験生によって異なる。非常に難しい決断ではあるが、これが合否を分けることもある。

そして話は元に戻るが、何かに「絞る」とき、あるいは何かを「ステル」とき、一つの基準になるのはやはり「成績が上がっている」かどうかであろう。

成績が上がっているときは、なるべく動かないこと。しかしどうしても何かを新たに始めなければならない場合は、少なくとも成績を上げている原因を、絶対に取り除かないことが重要だ。
当たり前なのについやってしまうこともあるので、十分に注意したいものである。

プロフィール


小泉浩明

桐朋中学・高校、慶応大学卒。米国にてMBA取得後、予備校や塾を開校。現在は平山入試研究所を設立、教材開発など教務研究に専念。著作に「まとめ これだけ!国語(森上教育研究所スキル研究会)」などがある。

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