中学で英語が得意になる! 第6回 家庭でできる英語学習(1) 教科書を使った習熟法【前編】

「聞く」「話す」「読む」「書く」の4技能など、ますます「使う」力が求められている中学校の英語。一方、ベネッセ教育研究開発センター(現・ベネッセ教育総合研究所)の調査(2009年)によると、「英語が苦手」と答えた生徒は6割に上っています。英語への苦手意識を払しょくし、英語の力を伸ばすためには、何が必要なのでしょうか?
このシリーズでは、「世界の100人の教師」に選ばれたこともある関西大学教授の田尻悟郎先生に、中学英語のつまずきやすいポイントとその解決方法について解説していただきます。

前回までの学習で、英語の理解が進んできたら、いよいよ「習熟・応用」の段階。今回からは、教科書本文を使って、家庭で簡単に応用力を付ける方法をご紹介します。

<中学で英語が得意になる!(動画)>



教科書本文を使った習熟法 “Read and look up”

<6-1.教科書を使った習熟法(動画)>

習熟とは、英文をそのまま暗記する活動で、
応用とは、暗記した文の形を変えていく活動です。

まず、以下の英文を使って、“Read and look up”という習熟法をご紹介しましょう。

 Do you like vegetables? I do.
 My family runs a grocery store.
 We always have vegetables on our kitchen table.
 My grandfather opened the store 30 years ago.
 My father works with him.
 They go to the vegetable market at 4:00am.
 I often help them.
 But it is very difficult for me to get up so early.


これを一文ずつ、読んでは暗記していきます(1行目は2文ですが、まとめて覚えてしまいましょう)。
さあ、やってみますよ。
(1行目をしばらく眺めてから、文を見ずに)“Do you like vegetables? I do.”
 2行目は……“My family runs a grocery store.”
 3行目……うーん、長いですね(笑)。
実はこのように、一文が複雑で長いほうが、“Read and look up”に向いています。なぜかと言うと、

 “We always have”(「私たちはいつも持ってる」んだな)
 “vegetables”(何を? 「野菜を」)
 “on our kitchen table”(どこにだっけ? 「キッチンテーブルに」だな)

……というふうに、子どもたちは、文を短く分けて覚えようとするうちに、一つひとつの部分の意味を感じ始めます。授業では、長く複雑な文があると、先生がたはつい親切に解説しがちになるので、子どもたちは板書を写すだけで満足してしまうことが多いのです。
逆に、長くて複雑な文ほど「覚えてみる」ことが効果的です。長い文を「覚えなさい」というと、子どもは文を自然と短く分けて、各部分の意味を考えるようになります。学び方が自主的になるんですね。



教科書本文を使った応用法 「あなたも漫才師」 二人称編

<6-2.教科書本文を使った応用法 あなたも漫才師1(動画)>

次に、英文を必要に応じて変えていく「応用法」をご紹介します。CDなどの音声教材を使うか、ご家族のかたが手伝ってあげるかしてください。
題して、「あなたも漫才師」。
漫才では、一方が言ったことを、相方がくり返すことがよくありますよね。たとえば……


 A:皆さん、野菜好きですか? ぼく好きですねん。
 B:えっ、きみ野菜好きなんか。
 A:うちの家族はねえ、八百屋さんを営んでるんですよ。
 B:へえ、きみんちの家族って八百屋さんやったんか!

これを、英語でやってみましょう。

 相手が“Do you like vegetables? I do.”と言ったら、
      “You like vegetables.”と返します。
 相手が“My family runs a grocery store.”と言ったら、
      “Your family runs a grocery store.”と返す。

このように IYou に変えて、MyYourに変えてくり返すわけです。
CDの音声や、家族のかたが読むのを聞きながら、英文を見ずにくり返せるかどうかチャレンジしてみましょう。

では、私がCDを使ってやってみますね。CDスタート!
 A:Do you like vegetables? I do.
 B:You like vegetables.
 A:My family runs a grocery store.
 B:Your family runs a grocery store.
 A:We always have vegetables on our kitchen table.
 B:You always have vegetables on your kitchen table.
 A:My grandfather opened the store 30 years ago.
 B:Your grandfather opened the store 30 years ago.
 A:My father works with him.
 B:Your father works with him.
 A:They go to the vegetable market at 4:00am.
 B:They go to the vegetable market at 4:00am.
 ←これはそのままですね。
 A:I often help them.
 B:You often help them.
 A:But it is very difficult for me to get up so early.
 B:But it is very difficult for you to get up so early.


……はあ、できた~(笑)。単純なやりとりに見えますが、英文を見ずに相方の言うことをくり返すのは、大人でもけっこう難しいですよ。ぜひ、お子さんと一緒にチャレンジしてみてください。

『田尻式フォニックスかるた』『田尻式フォニックスかるた』
<ベネッセコーポレーション/田尻悟郎(編)/3,150=税込み>

プロフィール


田尻悟郎

関西大学 外国語学部 教授。26年の公立中学校勤務を経て現職。NHK『わくわく授業』『プロフェッショナル』等に出演。2004年に「世界のカリスマ教師100人」に選ばれる。新指導要領策定や教科書開発に関わる。主な著書:『田尻悟郎の楽しいフォニックス』(教育出版)

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