現代アートを通じて地域を見つめる! 直島小学校4年生が見つけた地元の魅力とは【直島アート便り】
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小学4年生は社会科の一環で地域社会について学びますが、直島小学校では毎年フィールドワークなどを通じて地域の活動を学んでいます。今回は、直島の本村地区をテーマに、児童が春から取り組んできた活動をご紹介します。
生活の中心地「本村地区」
本村は直島の東部に位置しており、町役場や郵便局、寺社仏閣がある生活の中心地となっています。1998年には、本村を舞台に、点在していた空き家などを改修し、人が住んでいた頃の時間と記憶を織り込みながら空間そのものをアーティストが作品化する「家プロジェクト」が始まりました。
家プロジェクト「角屋」写真:上野則宏
江戸時代に建てられた日本家屋も多く建ち並び、家の門や玄関先に染色作家の加納容子氏が手掛けるのれんがかかっていたり、島の方が手掛ける様々なアート作品が見られたり、昔から変わらない町並みとアートが生み出すここにしかない風景が広がっています。
直島小学校の4年生は、春からフィールドワークなどを通じて、本村地区で展開している取り組みやこの地域ならではの魅力を、それぞれの視点で学んできました。
本村観察フィールドワーク
2021年4月に、児童は本村の地図を持ち、「家プロジェクト」や集落の様子を観察するワークを行いました。
「家プロジェクト」では、作品をよく観察し、気になったところ、疑問に思ったことを発言したり、書き留めたりしながら言語化していきます。
家プロジェクト「護王神社」の石室入り口にて
「家プロジェクト」の1つである「護王神社」では、透明な素材でできた階段を観て「何でできているんだろう?」「どうして一番上の段がないんだろう?「どこに繋がっているのかな?」など様々な問いを立てながら作品を鑑賞している様子が見られました。また、「ここから観るとガラスが紫に光っている!」など角度や位置を変えながら観る中で自分だけの見方を見つけたり、他の児童が見つけた視点を共有しあったりしながら、それぞれが作品の見方をどんどん深めていました。
家プロジェクト「護王神社」の石室でガラスの階段を鑑賞する児童たち
現代アートの解釈には正解がありません。作品を観たときに自分がどう感じたか、どこが気になったのかを起点に問いをたて、その理由を考えていく中で自然と自分だけの答えを導き出すことができます。
実際に足を運び、目で見て感じたこと、手で触って気になったことに焦点を当てることで、一般化された知識ではなく、自分だけの視点で、自分たちが暮らす地域の様子を観察することができたのではないでしょうか。
地域の過去を学び、今を見つめる
春の本村でのフィールドワークを経て、11月には再度「家プロジェクト」や集落を周遊するワークを行いました。
実際に作品を鑑賞する前に、まずは学校にて事前授業が行われました。
家プロジェクトが始まった経緯や、作品の制作プロセスに関する話を聞いた児童からは、「本村のアートの良さをもっとたくさんの人に知ってもらいたい」といった感想や、作品制作に携われるイベントに参加してみたいといった声があがりました。
事前授業で学んだ内容を踏まえて、今度は作品が作られた背景や素材の説明などのガイド付きで本村に展示されている作品を鑑賞していきます。
毎年4年生のガイドを担当してくださる、直島町在住の堀口容子さん
堀口さんとともに毎年ガイドを担当してくださる株式会社 直島文化村の猪原秀明さん
長年ガイドを担当している堀口容子さんと猪原秀明さんは、作品の特徴だけでなく、もともとあった家屋の歴史、島民とのエピソード、制作秘話などを交えながら児童と一緒に「家プロジェクト」を始めとするアート施設をまわり、作品の印象に深みを与えます。
家プロジェクト「石橋」にて庭を観察する児童たち
児童たちは一度鑑賞している作品でも、以前観たときとはまた違う感じ方をしたり、新しい発見があったり、作品との対話を楽しんでいました。
また児童からは、作品に関する質問から「どうしてアートを使っているのか?」といった大きな質問まで、幅広い疑問が共有され、学んだことや実際に観て感じたことから新たに問いを立て考え続ける姿が見られました。
春のフィールドワークで抱いた作品の印象との違いや新たに感じたことをもとに、今度は自分たちが本村をどのような場所にしていきたいかを考えていきます。本村のかつての姿を学び、今の姿を自分の視点で見つめてきた児童たちは、自分の地域の未来像をどう思い描いていくのでしょうか。
家プロジェクトの鑑賞を通じて得られた気づきや疑問をワークシートに書き留める。
地域の未来を自分事として考える
周囲の自然や集落の中に現代アートが点在する直島では、作品を観たときの印象や疑問を考えることが、周囲の環境との関係性に目を向けるきっかけに繋がります。本村をテーマに、地域の取り組みを調査する4年生の活動は、アートを切り口に自分の地域に関心を持ち、地域の未来を自分事として捉えるきっかけに繋がったのではないでしょうか。
現代アートの解釈は作品そのものの印象に留まらず、疑問に思ったことから問いを立て、考えを深めていくことで無限に広がっていきます。現代アートを観ることで、作品との対話を楽しむだけでなく、その先にある自然や地域の在り方に思いを巡らせてみてはいかがでしょうか。
The Naoshima Plan 「水」にて、足を水につけて五感で作品を体験する児童たち。
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