教育委員会は変わった? 変わらない? 昨年からの制度改革で

2015(平成27)年4月から改正地方教育行政法が施行され、教育行政に対する市区町村長の影響力が強まるなど、教育委員会制度が大きく変わりました。しかし、文部科学省の「新教育委員会制度への移行に関する調査」によると、地方教育行政の在り方が大きく変わったともいえない状況が浮かび上がってきました。

  • ※新教育委員会制度への移行に関する調査(平成27年12月1日現在)
  • http://www.mext.go.jp/a_menu/chihou/1367866.htm

新制度では、教育委員の互選で選ばれていた教育委員長と教育長を廃止し、首長が直接任命する新「教育長」に一本化されました。ただし、旧教育長の教育委員としての任期が残っているうちは、経過措置として、旧制度が適用されることになっています。

調査は、47都道府県、20政令指定都市、1,718市区町村教委を対象にして、改正地方教育行政法の施行から約8か月たった2015(平成27)年12月1日現在の状況を聞きました。教育長の任命が済んでいるのは、都道府県・指定都市の44.8%、市区町村の32.1%で、まだ半数以上の教委で旧教育長が在任しています。任命された新教育長の中身を見ると、新たな人材が任命されたケースが都道府県・指定都市では56.7%と半数以上いるものの、残り約4割は、旧教育長を改めて新教育長として任命していました。さらに市区町村では、旧教育長を改めて新教育長に任命したケースが54.2%を占めています。多くの首長は、新制度になったからといって、すぐに教育長を交代させることはしていないようです。

新制度では、教育行政に対する首長の影響力を強化するため、首長の主宰による「総合教育会議」の設置を義務付けています。これについて、すべての都道府県・指定都市が既に総合教育会議を開催しており、市区町村も90.7%が開催しています。ただし開催回数は、都道府県・指定都市で「2~3回」が73.1%、市区町村では「1回」が44.1%、「2~3回」が41.6%などとなっており、あまり開催回数は多くありません。また、市区町村では半数以上が、総合教育会議の事務局を、首長部局ではなく、教育委員会事務局に任せています。

総合教育会議のテーマを見ると、運営に関することなどを除けば市区町村で最も多いのが「学力の向上に関する施策」(419件)、「学校等の施設の整備」(402件)、「いじめ防止対策」(348件)などで、次いで「子育て支援」(256件)が挙がっていることが注目されます。この他、首長が策定することになっている教育に関する「大綱」について、市区町村では、「新規に策定」したが24.4%、「既存の計画等をもって充てた」が30.0%、「策定中」が40.2%などとなっており、従来の教育行政の路線を踏襲している首長も少なくないようです。教育委員会制度の見直しでは、首長の教育行政への影響力強化について、批判も少なくありませんでした。しかし、市区町村の現段階の状況を見る限り、「子育て支援」などがテーマになったことなどを除けば、変化はあまり見られないようです。

大切なのは、首長の権限強化よりも、首長と教育委員会の円滑な意思疎通と連携にあるともいえるのかもしれません。

(筆者:斎藤剛史)

プロフィール

斎藤剛史

斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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