海外では評価が高い日本の教育、文科省が「輸出」を計画
学力の低下やいじめ、不登校など、国内では問題点を指摘されることが多い日本の教育。しかし文部科学省によると、初等中等教育や高専など工学系人材の育成は、諸外国から高く評価されているという。そこで、同省は、官民を挙げて日本型教育を各国へ輸出したい考えだ。ベネッセ教育情報サイトが、教育ジャーナリストの渡辺敦司氏に話を聞いた。
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文科省の2016(平成28)年度概算要求では、「日本型教育の海外展開」として、各国のニーズに合わせつつ、日本型教育をパッケージで輸出することを計画しています。文科・経済産業・外務の各省と国際協力機構(JICA)や日本貿易振興機構(JETRO)、地方公共団体、大学・高専、NPO、民間企業などがオールジャパン体制で情報を共有し、日本の教育を海外展開していくことを目指します。
日本の発展が、明治以降の、さらには戦後の教育を基盤にしたものであるということは、国内外で一致した見方でしょう。そのため、新興国などを中心に「日本式教育制度を採り入れたい」という国も少なくないといいます。代表的な国際学力調査であるPISA(生徒の学習到達度調査)を実施する経済協力開発機構(OECD)も、これまで日本が「学力低下」したとの見方はしてきませんでした。むしろ、日本の学校や教員の潜在能力を高く評価しています。
次期学習指導要領の基本方針を示した中央教育審議会の特別部会「論点整理」では、「日本の改革は、もはや諸外国へのキャッチアップではなく、世界をリードする役割を期待されている」とまで言っています。自己肯定感が低い国民感情からすれば、心配なところはあるものの、日本の教育の長所に気付き始めたのは悪いことではないのかもしれません。
ただ、自国の素晴らしさを強調し過ぎて、独善に陥るのは危険。OECDもPISAなどの各種調査にもとづいて、客観的に日本の強みと弱みを分析しています。そう考えれば、今回の輸出は、日本の教育を国際的な視点で見つめ直すきっかけになるかもしれません。
出典:日本の教育、実は輸出するほどスゴい……? -ベネッセ教育情報サイト