少年の「振り込め詐欺」が増加 再犯率も上昇

警察庁がまとめた2015(平成27)年上半期の「少年非行情勢(外部のPDFにリンク)」で、1~6月までに刑法犯として検挙された少年(20歳未満)が、13年連続して減少したことがわかりました。その一方で、いわゆる「振り込め詐欺」で検挙された少年は過去最多を記録したほか、罪を犯した少年の再犯率が6年連続して上昇するなど、少年非行で新たな課題が出始めていることがうかがえます。

まとめによると、刑法が適用されない13歳以下の少年を除いて、刑法犯として検挙された14歳以上20歳未満の少年は、前年同期よりも3,601人(15.6%)減の1万9,409人でした。刑法犯少年の検挙者数が2万人を割ったのは、上半期の統計を始めた1979(昭和54)年以降、初めてのことです。ただし刑法犯少年の減少については、少子化により子どもの数が減っているので、検挙者も減るのは当然であり、犯罪そのものが減っているわけではないという見方もあります。
しかし人口比で見ると、刑法犯少年は1,000人当たり2.7人となり、やはり11年連続で低下しています。さらに、殺人や強盗などの「凶悪犯」の検挙者も3年連続で減っています。少年による凶悪犯罪がマスコミをにぎわすたびに、少年犯罪の増加や凶悪化が叫ばれますが、データで見る限り、少年による犯罪は確実に減少しているうえに、特段に凶悪化しているわけでもない、ということを見落としてはならないでしょう。

一方、2015(平成27)年上半期の特徴の一つとして挙げられるのが、振り込め詐欺による検挙者の増加です。統計を取り始めた2009(平成21)年から上半期ごとの検挙者(14~20歳未満)を見ると、09(同21)年22人、10(同22)年13人、11(同23)年44人、12(同24)年59人、13(同25)年111人、14(同26)年140人、15(同27)年176人と、5年連続で過去最多を更新しています。少年犯罪全体が減少するなかでの検挙者の急増は、憂慮すべき事態と言わざるを得ません。振り込め詐欺では、被害者をだますための新たな手口が次々と現れていますが、ゲーム感覚で詐欺に加担する子どもたちが増えていることが懸念されます。

このほか、特徴的なのが、性犯罪での検挙者数の高止まりと、刑法犯少年の再犯率の上昇です。性的暴行や強制わいせつなどの性犯罪による検挙者は、前年同期より16人増の217人で、高止まり傾向が続いています。刑法が適用されない13歳以下を含めると、2015(平成27)年上半期の性犯罪による検挙・補導者は前年同期より29人増の326人となり、そのうち中学生が153人(前年同期より16人増)を占めています。性犯罪の低年齢化が憂慮されるところです。

また、2015(平成27)年上半期の刑法犯少年のうち再犯者数は7,179人で、12年連続して減少しているものの、再犯者数を刑法犯少年全体で割った再犯者率は37.0%で、前年同期より1.3ポイント増加し、6年連続の上昇となりました。これは統計のある1989(平成元)年上半期以降で、最も高い割合となっています。少年非行の対策では、犯罪防止に加えて、再び罪を犯さないようにする更生保護の活動が重要になっているといえそうです。


プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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