教育改革を先取り? 新しい道徳は「考え、議論する」アクティブ・ラーニング
小中学校の「道徳の時間」を「特別の教科 道徳」(道徳科)に格上げする準備が進んでいる。3月に学習指導要領の一部改正が行われ、7月には指導要領の趣旨を説明した「解説」も出された。「考え、議論する道徳」をめざす今回の改訂について、教育ジャーナリストの渡辺敦司氏に、ベネッセ教育情報サイトが話を聞いた。
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小学校は2018(平成30)年度から、中学校は19(同31)年度から、道徳科の授業が正式に始まります。これまでの道徳は、読み物教材の「登場人物の心情理解のみに偏った形式的な指導」(指導要領解説)にとどまるなどしており、実際は児童生徒の道徳性が育っていないのではないかとの指摘がありました。そこで今回の改訂では、問題解決学習や体験学習を取り入れながら、「考え、議論する道徳」への転換を図ることにしたのです。
具体的には、「善悪の判断、自律、自由と責任」「向上心、個性の伸長」「公正、公平、社会正義」といったキーワードをもとに、グループで話し合ったり、書く活動で考えを深めたりしながら学ぶことになります。さらにどの教科書にも、生命の尊厳、社会参画、自然、伝統と文化、情報化への対応等の現代的な課題といった題材が取り上げられます。
学習指導要領の改訂や高大接続改革の論議では、「何を知っているか」だけでなく「知っていることを使ってどのように社会・世界と関わり、よりよい人生を送るか」の資質・能力にまで引き上げることをめざしています。幼稚園から大学までを通じて、「知識・技能」はもとより「思考力・判断力・表現力」「主体的に学習に取り組む態度」などを育成するとしており、そのために課題の発見・解決に向けて主体的に学ぶ「アクティブ・ラーニング」を採り入れることにしています。「考え、議論する道徳科」への転換はこの流れに沿ったもの。「何を知っているか」から「何ができるようになるか」へとシフトする学校教育全体の先駆けともいえるでしょう。
出典:「考え、議論する道徳」の授業と教科書はどうなる -ベネッセ教育情報サイト