いざという時のために知っておきたい! 家庭でできる子どもへ伝える消費者教育と消費者トラブル対処法【後編】

インターネットにまつわるトラブルや、いつの間にか振り込め詐欺の一員になっていたなど、子どもにまつわる消費者トラブルが、最近多く報告されるようになってきました。
前編に引き続き、家庭のなかで、子どもたちにどのような消費者教育を行っていけばよいのか、また、もしトラブルに巻き込まれてしまったらどのような対処法が考えられるのか、弁護士の佐々木博征氏に聞きました。



消費者トラブルに巻き込まれないようにするための法教育

「消費者になる」というのはどういうことだと思いますか? 「ものを買う」「サービスを利用する」ということは、販売者と売買契約、サービス利用契約を結ぶということです。すなわち、契約の概念を理解することが重要なのです。
勘違いされるかたもいるのですが、契約は契約書がなくとも、口頭でも成立するものなのです。書面にする必要も、押印する必要もなく、「買います」という購買者の意思を販売者が了承した時点で契約は成立し得るのです。
たとえば野菜を買いに行って、お客さんが「この大根ください」と言い、店員さんが「あいよ」と了承した時点で、売買契約自体は成立したということになるのです。
そして、契約は約束ですので、いつでも一方的に取り消したり解除できたりするとは限らないことをよく理解しておきましょう。

契約についての理解を深めるには、日本弁護士連合会が主催している法教育のフォーラムに行くなどが考えられます。また、裁判を傍聴することもおすすめです。裁判傍聴というと、犯罪とそれを罰する規定が記された刑法が適用される「刑事事件」をイメージしがちですが、契約の意味や責任を理解するためには人間の生活に関する事件で民事訴訟の対象となる「民事事件」を傍聴することもよいでしょう。



子どもが消費者トラブルに巻き込まれてしまったら!? Q&A

実際に、消費者トラブルに巻き込まれてしまったらどうしたらよいのでしょうか。想定事例をQ&A形式で紹介します。



Q. 16歳の娘が、繁華街で「モデルにならないか?」と声をかけられました。雑誌に載ることができるということでモデル契約を結んだそうなのですが、モデルになるための教材費を請求されたそうです。恐ろしくて、その場で契約書にサインをしてしまったそう。その後、娘に立て続けに支払いを求める連絡が来るのですがどうしたらよいのでしょうか?

A. 契約の未成年者取り消しという方法が有効です。これは、民法第5条2項に未成年者が法定代理人の同意を得ないで行った法律行為は取り消すことができるという条文を根拠にしたものです。保護者が、「同意していない」場合には、販売契約や利用契約を取り消すことができるのです。
一方で、民法第21条に、未成年者が「自分が未成年者ではない」と年齢を偽った場合は、未成年者取り消しによる契約を取り消すことができない旨規定されています。お子さんが、実年齢を伝えているかどうか状況確認は必要になります。

こうした被害については、早めに書面等で契約解除の通知を出すことが重要です。ご自身でも作成できますが、弁護士など専門家のチェックが入ったほうが、モレなくワンストップで解決できるでしょう。往々にして相手も詐欺行為をしている認識があるので、それを内容証明郵便等で送ることで、請求がやむパターンが多いです。

Q. 13歳の子どもが、インターネット通信販売で高額な教材を購入していました。子どもから事前に相談はなく、商品が届いてみて初めて気が付いたのです。どうしたらよいでしょうか?

A. クーリングオフや未成年者取り消しの方法を使い、契約を破棄することが考えられます。クーリングオフは、通信販売やキャッチセールスで売られた商品などを返品できる方法です。

通信販売の解除は、特定商取引法第15条の2において定められており、商品の引渡しを受けた日等から8日間が経過しないうちに契約解除の通知をしなければなりません(ただし、「商品に欠陥がある場合を除き、返品に応じない」などの特約が広告及び申込画面に表示されていた場合には、返品できない場合もあります)。迅速な対応が必要となりますので、パッケージは開封せずにすぐに消費者センターや弁護士に相談をしましょう。
また、通信販売のホームページは、後日削除されている場合も多いので、プリントアウトしておくことをおすすめします。

なお、こうした消費者被害は随時「国民生活センター」の相談事例・判例の部分に最近のトラブル傾向がまとまっています。「おかしいな」「これはもしかして詐欺?」と思うようなことがあれば、まず検索することもおすすめです。

Q.12歳の息子が「高額なアルバイトがあるから」と友達に誘われたと言っています。話を聞くと、銀行口座からお金を引き出すだけで、数万円がもらえるそうです。怪しいと思うのですが、やめるようにどう説得すればよいでしょうか?

A. 「怪しい」と思い、子どもにやめるよう説得するのは、保護者として正しい判断ですね。日頃から、「高額なアルバイト」といった甘言にはわながあると教えておくことは重要です。これは、振り込め詐欺等の片棒を担がされる可能性が高いと思われます。

犯行グループが、未成年者を「出し子(振り込め詐欺などの犯罪に利用された預金口座に、被害者からお金が振り込まれた際に、この口座から現金を引き出す役割)」「受け子(被害者から直接現金を受け取る役割)」「かけ子(振り込め詐欺などの犯罪で、被害者に直接電話をかけお金を振り込ませる役割)」として利用する事件が増加しています。
明確に犯罪だと認識しておらず詐欺グループの一員となっていても、罪に問われてしまう可能性もあります。万が一、既に犯罪行為を行っていたとしたらすぐに警察に相談をしましょう。悪い仲間からの誘いを断るのは難しく、「お前ももう犯罪者だ」などと脅されて罪を重ねてしまうことも少なくないからです。

また、家庭では日頃から、下記のような注意喚起をしましょう。

(1) 預金を引き出したり、現金を受け取ったり、口座を開設したりするだけで高額なアルバイト料をもらえるような仕事は、怪しむこと
(2) 直接話を聞くまで仕事の内容を知らされず、当日になって、仕事の概要を知らされた場合には、断ってその場から立ち去ること
(3) その場で詐欺集団に断る勇気が持てなかった場合でも、犯罪行為を行う前に、親や警察、銀行の行員などに知らせて、相談すること


専門家も上手に活用してください。「こんなことを相談してよいのでしょうか」と言われることもありますが、弁護士は、皆さんに代わって専門の知識を武器に戦うことが仕事ですからぜひ活用してください。
依頼料などが心配な場合には、無料相談に行ってみるのもよいでしょう。また、国民向けの法的支援を行う中心的な機関である「法テラス」でも相談できます。

年齢に関係なく、大人でも子どもでも誰もが巻き込まれる可能性がある消費者トラブル。「いざ」という時に正しく振る舞えるように、法律を正しく理解し、活用するようにしてください。


プロフィール


佐々木博征

弁護士。桜木町法律事務所勤務後、青葉台法律事務所を開所。横浜市内公立小学校での講演活動など、「気軽に相談できる頼れる弁護士」であろうと弁護士を身近に感じられる活動を精力的に行う。

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