震災教訓に「学校安全推進計画」見直しへ

東日本大震災から4年がたちます。被災地の復興と学校や子どもたちへの支援がまだまだ必要ですが、日本全国どこでも大きな災害が起きる可能性が避けられないなか、経験を徹底的に教訓として生かすことが求められます。その一つに、「学校安全の推進に関する計画」があります。

同計画は、おおむね5年間にわたる施策の基本的方向と具体的な方策を明らかにするものです。2009(平成21)年に旧学校保健法を改正した「学校保健安全法」で、学校保健計画とは別に作成することが義務付けられました。現行計画(2012~16<平成24~28>年度)も半年前に起こった東日本大震災を教訓として検討が行われましたが、被災地が混乱するなか、当時集められる最大限の情報を生かして、震災から1年が過ぎた2012(平成24)年4月に策定したものでした。その後、有識者会議で防災教育・防災管理に関する報告(外部のPDFにリンク)が出されたり、多くの児童と教職員が二次避難中に津波で亡くなった宮城県石巻市立大川小学校の事故検証報告書がまとまったりするなど、新たな教訓も次々と蓄積されてきています。
そうしたなか、任期を2年とする中央教育審議会は第8期がスタートしました。このうち学校安全を扱うスポーツ・青少年分科会の学校安全部会では、次期の安全推進計画をどう見直すかが最大の課題となります。当面は「危険等発生時対処要領(危機管理マニュアル)」の作成や危機管理に関する教職員研修、事故分析などを通じて、学校安全管理の実態と課題を詳細に議論し、2016(平成28)年度に入ってからの本格的な新計画策定に向けた審議につなげたい考えです。

文科省が2012(平成24)年3月末現在で行った調査(外部のPDFにリンク)によると、東日本大震災から1年がたった11(同23)年度中に学校安全計画を策定している学校の割合は95.7%(09<同21>年度の前回調査に比べ3.4ポイント増)に達し、危機管理マニュアルを作成している学校も92.5%に上りますが、浸水予想区域の学校について見ると、津波を想定した危機管理マニュアルを作成しているのは76.7%、津波を想定した避難訓練を実施しているのは77.2%などとなっていました。また、被災時に児童生徒が学校に待機することを想定した備蓄がある学校は64.2%、災害時の児童生徒の引き渡しや待機方法について保護者との間で手順やルールを決めている学校は全体で70.8%でしたが、公立高校では35.3%にとどまっていました。

もちろん、その後も各自治体や学校で取り組みが進み、こうした取り組み状況の数値はかなり改善されていることでしょう。それでも今後「想定外」の被害を少しでも抑えるため、各学校や自治体での取り組みの指針となる国の計画を十分に練ってほしいものです。また、既に検討が始まっている学習指導要領の改訂についても、第7期の学校安全部会でまとめた提言をもとに、子どもたちが自らの身を守れる力を付けられるようにするため、どれだけ実効性ある安全教育を盛り込めるか、審議が期待されます。


プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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