「学校統廃合」の手引きで揺れる地域と学校の関係

約60年ぶりに文部科学省が公立小中学校の適正規模・適正配置の手引きを見直したことを受けて、学校統廃合が大きな話題となっています。一方、東日本大震災で学校が避難所となって地域を支えたことから、地域コミュニティーの中核としての学校の役割にも注目が集まっています。少子化による人口減少が進むなかで、地域と学校の在り方は今後、どうあるべきなのでしょうか。

地方自治体にとって学校統廃合はこれまでも大きな課題でしたが、文科省による手引き改訂を受けて、学校統廃合の動きは加速するという見方が強まっています。実際、自治体関係者の間には「地域住民を説得しやすくなる」という声もあるようです。しかし、当コーナーでも指摘したように、文科省の手引きは学校統廃合だけを求めたものではなく、小規模校の教育効果なども認めています。
ただ、学校の統廃合を考える場合、設置者である地方自治体、子ども・保護者という直接の関係者だけでなく、地域という第三の存在があることを忘れてはなりません。文科省の手引きも小・中学校は「各地域のコミュニティの核としての性格を有する」と述べています。つまり、学校統廃合は子どもたちの教育効果、登下校の安全性などの面だけでなく、それによって地域コミュニティーがどうなるかという視点が不可欠なのです。

また「地域創生」に向けて政府は2014(平成26)年末、「まち・ひと・しごと創生総合戦略」を策定しましたが、その中で「全ての小・中学校区において学校と地域が連携・協働する体制」の構築を求めています。これを受けて文科省は、2015(平成27)年度予算案(外部のPDFにリンク)の中に「学校を核とした地域力強化プラン」として、厚生労働省と連携して小学校における「放課後児童クラブ」(学童保育)と「放課後子供教室」(すべての子どもを対象として、地域住民と連携してさまざまな活動を行う)の一体型運営を2019(平成31)年度末までに全国に1万か所以上(現行600か所)に拡大する計画を盛り込んだほか、地域住民が学校運営に参画するコミュニティ・スクールの導入についても15(同27)年度は新たに300市町村を支援することにしています。2014(平成26)年度から実質的に解禁された公立学校の土曜授業でも、地域住民などと学校が協力して実施する取り組みを支援することにしています。政府や文科省は、学校統廃合を推進する一方で、学校を核とした地域づくりという考え方も同時に持っているということがわかります。

少子化により学校統廃合は不可避だが、同時に人口減少社会における地域づくりの拠点として学校は欠かせない……。少子化と人口減少という一見同じに見える事態の間で、学校と地域の在り方は揺れているというのが現在の状況と言えるかもしれません。ただ、これからの時代において、小規模校の教育のよさをアピールするだけでは学校は存続できないでしょう。同様に、学校があるだけで地域が活性化することもないでしょう。地域全体で学校を支える努力があってこそ、学校も存続できるようになるのです。今後、地域と学校がどれだけ手を取り合っていけるかが、両者の生き残りのカギとなるでしょう。


プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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