何を質問しても「わからない」と答える子どもには「問いかけ続けるしかない」と専門家
勉強でも社会を生き抜くためにも、「自分の頭で考える」ことは非常に重要。しかし近年、自分で考えてみようとする学生が少なくなっているという。そこでコーチングのプロ、石川尚子氏に「自分で考える子ども」へと導くためのコツを伺った。
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「コーチングでは、こちらが答えを与えるのではなく、質問をして相手に答えを編み出させるんですよ」という説明をします。すると時々、こんなお声が返ってきます。
「質問をしても、子どもは『わからない』しか言わないんです」
「答えが返ってこないので、うちの子には無理です」
「結局、質問しても無駄なので、質問しなくなります」などなど。
たしかに、投げてもボールが返ってこないキャッチボールほどつまらないものはありません。意味がないんじゃないかと思ってしまいます。お気持ちはわかりますが、コーチングの質問は、「投げかけることに意義がある」とわたしは思うのです。
たとえば、子どもが学校から帰ってくるたびに、「今日は学校で何が楽しかった?」と質問するお母さんの話。たしかに最初のうちは、「別に」「普通」としか答えなかったお子さんが、毎日毎日質問していると、聞かれる前から「お母さん、今日はね、これが楽しかったよ」と話すようになってきたそうです。「今日もお母さんに質問されると思うと、何が楽しかったのか考えながら帰るようになったよ」とそのお子さんは話したそうです。人は、質問されると意識が自然とそこに向かい始めます。「考えてみよう」という習慣が生まれます。子どものころから、この習慣を持たせておくことは本当に重要だと思います。
すぐに答えが引き出せなくてもよいのです。考えてほしい方向に意識を向かわせることが大切です。ですから、間違っても、「なぜ、いつも遅いの?」「どうして、言うことを聞けないの?」などという向かわせたくない方向に焦点をあてて質問してはいけないのです。逆に「わかるとしたら」と問いかけられると、答えを探す方向に意識は働き始めます。「あるとしたら何?」と考えてみることで、見えていなかったものが見えるようになってくるのです。
「自分で考えてみる習慣」は子どもにとって一生の財産になると思います。そのためには、今、「答え」が返ってこなくても、問いかけ続けることが大切なのです。