保育事故のデータベース整備へ 政府の検討会が再発防止で-斎藤剛史-
政府は少子化対策や女性の社会進出の支援策の一環として、2015(平成27)年4月から「子ども・子育て支援新制度」を実施する方針を掲げています。新制度が実施されれば、より多様な保育が可能になりますが、そこで心配されるのが保育事故の発生です。このため文部科学省・厚生労働省・内閣府は、乳幼児の保育に関する重大事故の報告を義務付けたうえで、それを一元的にデータベース化し、保育事故の再発防止などに役立てる方針を打ち出しました。
政府は、消費税を10%に引き上げることによる財源を活用して、待機児童ゼロを目指す「子ども・子育て支援新制度」を開始することにしていました。消費税引き上げはしばらくの間見送りとなりましたが、新制度は予定通り実施される見通しです。ポイントは、保育所や幼稚園の多くを保育・教育の両方の機能を持つ「認定こども園」へ再編したり、現行の無認可保育所の認可化を進めたりするほか、小規模保育(6~19人)、家庭的保育(保育ママ、1~5人)、居宅訪問型保育、事業所内保育、一時預かり事業などの多様な保育事業を設けることです。
しかし、ここで懸念されるのが保育事故です。現行でも幼稚園、保育所・無認可保育所などは重大事故が発生した場合、市町村や都道府県などを通じて国に届けることになっていますが、省庁ごとに管轄が異なるなど手続きに複雑な面があるほか、事故の再発防止などの対応は各地方自治体に任され、国が関与する仕組みがありませんでした。
このため3府省は共同で検討会を設置し、重大な保育事故発生の把握とその再発防止のための在り方を検討していました。同検討会の中間まとめ(外部のPDFにリンク)では、認定こども園、幼稚園、保育所、認可外保育施設、小規模保育、家庭的保育、認可外を含む居宅訪問型保育、事業所内保育、一時預かり事業などの保育・教育施設に重大事故の報告を義務付けるよう求めています。報告の対象となる重大事故は、死亡事故、治療に30日以上を要する負傷・疾病を伴う重篤な事故となります。
重大事故の報告は都道府県などを通じて国に集め、データベース化します。データベース化された事故の事例は、個人情報や施設の名称・所在地を除いた形で公表し、再発防止のための研究や対策に利用できるようにします。また中間まとめでは、乳幼児保育ではありませんが、放課後児童クラブ(学童保育)についても同検討会の方針に準じて対応するよう提言しています。
これらが具体化されれば、全国の保育関係施設の重大な保育事故の情報をデータベースによって関係者や研究者らが詳細に調べることが可能になり、保育事故の防止につながることが期待されます。さらに同検討会では今後、保育事故予防のためのガイドラインの作成、保育事業者に対する地方自治体の指導監督体制の強化などを引き続き議論していく予定です。
「保育難民」という言葉が叫ばれているように、保育施設の充実は急務となっています。しかし、それによる事故の増加など保育の質の低下は絶対にあってはならないものでしょう。