東京大学 工学部 建築学科(2) 実物を見たり、聞いたり、触ったりする経験を [大学研究室訪問]
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日本が転換期を迎えた今、大学や学部をどう選び、そこで何を学べば、お子さまの将来が明るく照らされるのでしょうか。今回訪れたのは、日本の伝統的木造建築の耐震性などを研究する東京大学の藤田香織准教授の研究室です。研究の醍醐(だいご)味などを語っていただいた前回に引き続き、研究者が社会のために果たすべき責任の重さや、高校生までに何をすべきかなどについて伺いました。
■阪神淡路大震災で知った、研究者としての責任の重さ
1995年の阪神淡路大震災の際、大学院生だった私は現地に調査にかけつけました。そこで突き付けられたのは、亡くなったかたの大多数は木造住宅の倒壊によるものという、ショッキングな事実でした。お寺と住宅とは、使う材料も、構造も、造り方も違います。しかし、同じ木材であることに変わりはありません。私は衝撃を受け、木造建築の研究者である自分に課せられた責任の重さを痛感しました。
地震国である日本では、建築の研究者はそもそも耐震と無縁ではいられません。日本の木造建築の美しさにひかれこの研究を始めましたが、阪神淡路大震災での経験を機に、そのことを改めて思い知り、耐震性の研究にもよりいっそう力を入れるようになりました。そんな中で迎えた2011年の東日本大震災では、今度は学生たちを指導する立場として、学生たちと共に被災地を訪れ、思いを新たにしています。
■学生たちが職人になって、ものづくりを

学生がつくった「継手仕口」の作品例
学部の授業の中で「継手仕口(つぎてしぐち)を作ろう」という課題を実施しています。「継手仕口」とは、木造建築を造る際に木と木の接合部を加工して互いにうまくはめ込むようにして、釘などを使わず接合させることです。それを、学生たち自身が職人になって製作します。実際にお寺などに使われている接合を再現する学生もいれば、オリジナリティあふれる方法を考える学生もいます。
この課題のねらいは、手を動かして作ってみる経験をしてもらうことです。私自身、学生時代にこの課題に取り組んで、とてもおもしろかったし、木造建築に対する興味や理解が深まりました。こうした経験は、書物を読んでいるだけではできません。大学生になってからに限らず、できれば高校生のうちから、興味を持っていることについて、外に出て、実物を見たり、聞いたり、触ったりする経験をすることをおすすめします。
■保護者のかたが「すごい!」と感じた人とお子さんが接する機会を
私は学生時代、母が参加していた「源氏物語を読む会」の講師の先生がすばらしいと母から聞かされ、その先生にお目にかかったことがあります。本当に博識なかたで、ご専門だけでなく映画などにも造けいが深く、古典にそれほど興味のなかった私もとても刺激を受けました。大学時代には、シンポジウムで高名な物理の先生の講義を聴き、最先端の難解な話題を、専門外の私にもわかりやすく説明されることに驚かされました。
どんな分野でも「極めた」人と接すると、大きな刺激や力をもらえます。しかし、人はどうしても、自分の属している世界や、興味のある分野にとどまりがちです。ですから、ぜひとも保護者のかたには、ご自分が、「すごい」と思う人に出会ったら、お子さんにもその人に接する機会をつくってあげてください。面と向かって話すのではなく、横で話を聞いていれば十分です。それがきっと、何かの形でお子さんの将来に生かされると思います。
学生に聞きました! |
松本直之さん(大学院博士課程1年、兵庫県出身) |
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