岩崎恭子さん(バルセロナ五輪・金メダリスト)に聞く、「壁を乗り越える力」の育み方【後編】~自主性を見守り、応援する~

14歳で、史上最年少の金メダリストとなった元競泳選手の岩崎恭子さん。【前編】では、金メダリストとしての挑戦となったアトランタ五輪での経験と、競技引退後の活動についてお話を伺いました。今回は、現在3歳になる娘さんのお母さまでもある岩崎さんに、子どもの才能を引き出し、チャレンジする力を育むために意識されていることを伺います。

子どもの才能、可能性を伸ばすには?

「好きこそものの上手なれ」という言葉がありますが、子どもは好きなことを夢中でやっていくと、思いがけない才能が開花するものです。それは私自身が経験してきたことでもあります。私の母が子どもの習い事に熱心で、姉のまねをしたい私にも同じように水泳を習わせてくれました。水泳で記録を出すことに夢中になった私は、姉と競うようにして記録を伸ばしていけたのです。

イベントには、水や泳ぎが苦手な子どもたちも参加します。そんな子どもたちには、寄り添い体を支えてあげることで、「支えているから力を抜いても沈まないよ、大丈夫」と、がちがちに入っている力を抜くことから始めます。力を抜くと、体は浮くようになっています。そこですかさず、ほめてあげる。すると「できた!」という喜びが生まれます。この「できる」という体験と喜びを一つひとつ増やしていくことで、苦手なことが好きになり、得意なことになっていくのだと思います。

記録を伸ばせない時、苦手意識を持っている時は、たいてい体に力が入っているものです。力を抜くこと、そして「できた!」を積み上げていくことを、大人は「ほめる」ことでサポートしてあげるとよいのではないでしょうか。



長女の自主性を尊重

娘は今年3歳になりました。キラキラしたものが大好きで、私のお化粧やネイルにも興味シンシン。私がシンプルなネイルにすると、「今日のお爪はかわいくない」など辛口の批評が飛んできて、女の子だなーとほほえましくなります。

通っている幼稚園のカリキュラム内で十分に学び、遊んでいるので、水泳も含めて今はまだ習い事はさせていません。夫もスポーツ選手でしたし(元ラグビー日本代表、斉藤祐也氏)、トップアスリートの試合などを家族で観ていますから、そのうち何か始めるかもしれません。でもあくまでもそれは、彼女の自主性に任せようと思っています。

子育ては基本的に私が主導で、夫がサポート役です。二人とも、似た環境で育ってきたせいか、家庭のスタイルや価値観が近く、ぶつかることはありません。子どもには、やってはいけないことや危険なことについては、厳しくしつけています。気を付けているのは、子どもに禁じていることを私たちもやらないこと。「大人だからやってもいい」という言い訳をして、子どもとの信頼関係を損なわないよう注意しています。



子育てはひたすら見守りと応援

私の両親が子どもの里親をしていることもあって、いろいろな子どもに対するさまざまな子育てを身近に見てきました。その姿から、ひたすら見守ることと応援することが、すべての子育てに通じることなのではないかと思っています。夫も私も、自分がやりたいと思ったことに対して、親から怒られた記憶がありません。もちろんしつけは厳しく、まちがったことは叱られました。たとえば、自分からやりたいと言って習わせてもらったピアノのレッスン。途中で嫌になりやめようとした時には、「やりたくて始めたことをそんなに簡単に投げ出すものではない」と、続けさせられました。そのおかげで、継続することで身に付く力を学ぶことができました。夫とは、娘が何かに挑戦しようとするなら、手も口も出さずに応援しよう、彼女が助けを必要とした時に手を差し伸べられるよう見守っていよう、と話しています。常に見守っていなければ、必要なタイミングにサポートすることはできません。親のサポートを上手に利用しながら、やりたいことにチャレンジし、自分らしい人生を歩んでいってほしいと思っています。

プロフィール



スイミングアドバイザー。1992年バルセロナ五輪にて史上最年少(14歳)で金メダル獲得。競技引退後は、水泳指導、講演、執筆、コメンテーターなど、水泳の普及に精力的に活動中。1児の母。

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