広域通信制高校、ニーズの多様化に課題も浮き彫りに
全日制・定時制・通信制と高校課程には3種類ある。文部科学省は、通信制のうち、学校のある都道府県だけでなく他県に住む者も対象とした「広域通信制(広域の通信制の課程)」の一部の学校に、不適切な実態があるとして、対策を講じる構えだ。教育ジャーナリストの渡辺敦司氏に詳しく話を聞いた。
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広域通信制高校としては、NHK学園が古くから知られています。最近では自由な時間に学びたい生徒や不登校生などニーズの多様化に対応するため、学校法人立(私立)はもとより、構造改革特区だけに認められている株式会社立(株立)の学校も増えています。
文科省は2012(平成24)年、広域通信制の中には民間の「サポート校」と混然一体となった運営が行われていたり、添削指導がマークシート方式で行われていたりするなどの不適切な事例があるとして、調査結果をもとに自治体に対して適切な運営を促すよう通知。それでも課題のある学校が今なお存在しているとして、2013(平成25)年にも調査を行いました。
文科省が一部の広域通信制高校を問題視しているのは、高校と名乗る以上は、通常の高校と同じような教育の「質の保証」を行うべきだと考えているからです。そのため、高校教育の質保証の在り方を検討している中央教育審議会の高等学校部会がまとめる予定の報告に、「広域通信制の在り方見直し」を盛り込みたい考えです。
ただし、通信制高校の中には、既存の学校システムに適応できない生徒の実態に合わせた指導方法を取るため、あえて学校教育法に縛られないサポート校での指導を中心にする株立学校も少なくありません。高校卒業が公的資格である以上、一定の質が保証されるものでなければならないのは当然です。しかし、通常の学校では中退を余儀なくされ、就職でも不利となるような若者の成長を促し、卒業に結び付けるためにはどのような態勢が必要なのか、という視点も忘れてはならないでしょう。