「高校生になりきれていない1年生」に家庭でできることは?

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先日、ある地方の進学校の1学年主任の先生に「1年生2学期の指導テーマは何ですか?」と質問したところ「生徒が中学生から高校生になることだ」という答えが返ってきて驚きました。通常、そのフレーズは高校1年生1学期に使う言葉です。いったいどういうことでしょう。

この記事のポイント

全国の高校で起こっていること

今年の高校1年生は、例年に比べて次のような傾向があると、複数の高校の先生が感じているようです。
○気持ちが学校に向いていない
○中学校学習範囲の基礎の定着ができていない
○やる気がないわけではないが、家庭学習をきちんとできない

この数年、中学校はコロナ禍の影響によって先生も生徒もかなり行動が制限されてきました。授業・行事・部活動といった学校での活動の充実を図ることが難しく、学校という場でがんばって得られる「成長実感」が例年よりも低下していると考えられます。また、休校等の対応のなかで、中学校の先生が個々の生徒の学習状況をきめ細かく把握し、指導することが難しく、きちんとした家庭学習(自主学習)の手法を生徒が身に付けられなかったのではないかと思われます。さらには、中学3年生のときに教科書が改訂され、中学校の先生にとっては新教科書の研究や授業の在り方の改革にも時間を割かねばならず、生徒に向き合うことが十分にできなかった苦しい学年だったのではないでしょうか。

「高校生になる」とは

最初の話に戻りますが、「高校生になる」とはどういうことでしょう。
高校によってさまざまな定義や目標があると思いますが、端的に言うと、「自分で考え、行動できるようになることが大切であることを自覚し、実行し始めること」と言ってもよいと思います。

高校入学に当たっての選択の幅は、多くの場合、一定の地域内の高校数校に限られます。
しかし、高校卒業時の進路を考えるに当たっては無数の選択肢がある中で、選び、そして実現していかなければなりません。言葉を換えると、「自分自身のよりよい人生を選び、実現していくためのスタートを切っている状態になること」とも言えます。

「子ども扱い」からの脱却

「自分自身のよりよい人生を選び、実現していく」ということは、さらに言い換えると「大人になる」ということです。例年よりも大人になっていくスピードが遅くなりがちな学年である高1生に対して、家庭でできることは何でしょうか。

まずは大人として接することを心がけましょう。
朝、遅刻しないように起こしてあげたり、三者面談で先生から高校生本人への質問なのに、代わって答えようとしたり、《先回り》をしすぎていませんか。

このように「子ども扱い」しているといつまでも子どものままです。
「失敗させたくない」という保護者の深い愛情から行っていることも多いと思います。
しかし、人は失敗に学んで、成長します。
失敗を喜び、学びに生かすという姿勢を育むことが大切です。
お膳立てしすぎることを控えるとともに、人生の先輩として笑顔で保護者自身の失敗体験談を語ってあげてください。身近な人の体験を聞くことで、失敗の大切さとその失敗を取り戻すこともできる社会であることの理解が深まっていくでしょう。

家で勉強しない、勉強しても続かない、という高校生の多くも、心の中では「しっかりやらなきゃ」と思っています。やらなければならないとわかっていることを「やりなさい」と言われても、そこでは反発心だけが増幅されかねません。ぜひ高校生本人に生活時間に関するルールを決めてもらい、保護者と約束してもらいましょう。

○時から○時まではスマートフォンの電源を切る、○時から○時にお風呂に入る、など。
しばらくするとだいたい守れなくなっていくのですが、そのときには再度本人に見直しをしてもらいましょう。高校生本人にとっても自分自身を振り返る機会になりますし、「自分で選び実現する」ことを保護者が求めていることも伝わっていきます。

また、保護者自身は「学んでいる姿」を見せているでしょうか。
モデルとなる存在が成長を促すと言われています。懸命にあるいは楽しみながら学んでいる保護者の姿は、最高のモデルになります。仕事のこと、家事のこと、趣味のこと、地域活動・ボランティアのこと、何でも構いませんが、新しいことにチャレンジしたり、学びつづけたりしている姿をぜひ高校生自身に見せてあげてください。

まとめ & 実践 TIPS

高校でも「中学生から高校生へ」と、大人になっていくための成長を促してくれていますが、高1生はコロナ禍の影響を強く受けていることに加え、新課程一期生という、ある意味特別な学年でもあります。保護者の方も「自分で考え、選び、実現していけるようになるために」ということを意識して育てていってほしいと思います。

プロフィール


西島 一博(にしじま かずひろ)

ベネッセ文教総研所長。株式会社ベネッセコーポレーションで、高校、中学校、小学校対象のさまざまな教材開発に携わる。2016年度より高校用教材・生徒手帳などの制作・販売を行うグループ会社、株式会社ラーンズの代表取締役社長を務め、2021年度より現職。ベネッセ文教総研では、主として中高接続、高校教育、高大接続の領域での研究、情報発信を行っている。

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