「おこづかいはドルで」「お手伝い報酬制」「家族マネー会議」。子どものお金スキルを伸ばすためのNGは?横山光昭さんに聞いた
- 育児・子育て
「友達の誕生日会に呼ばれた。おこづかいを前借りしてもいい?」
突然の申し出に、助けてあげたくなる保護者のかたは多いのではないでしょうか。でも、「おこづかいの前借りは難しい」と知ることで、子どもは「お金の使い方」を学べるかもしれません。
金額やタイミングなど、何となく決めてしまいがちな「子どものおこづかいルール」。子どものお金のスキルを伸ばすには、どんなおこづかいの渡し方があるでしょう。『子どもが10歳になったら投資をさせなさい』の著書もあるファイナンシャルプランナーの横山光昭さんに聞きました。
成績やお手伝いによる報酬制は要注意
質問1:子どもがお手伝いをしたらおこづかい。お金スキルは伸びる?
──「洗いものをしたら〇円」など決めているお宅もありますね。どうでしょうか。
横山光昭(以下横山):おこづかいの渡し方は、大体3つの方法に分けられます。毎月500円などの金額を決めた定額制、必要な時に渡す一時金制、そしてお手伝いなどに対して渡す報酬制です。多くのご家庭で採用している月々の定額制には、「お金のやりくりの基本」が身に付きやすいメリットがあります。「お金の実感」を育てるためには、一時金制もあまりおすすめできません。
報酬制にはメリットとデメリットがあります。「労働には対価がある」ことを学べる一方、「おこづかいがなくなったら働く、あるときは働かない」という感覚を持ってしまうかもしれません。その場合、お金のスキルは伸びませんよね。
──報酬制を採用する場合、どんなふうにすれば良いでしょう?
横山:定額のおこづかいを少なめに設定して、お手伝い報酬と組み合わせる方式がおすすめです。あらかじめ「お風呂掃除で◯円」などを決めておくと、ポイントをためる感覚で楽しくできますね。ただ、勉強が得意ではないのに「テストの成績によって〇円追加」のような報酬の仕組みを作ってしまうと、逆にやる気が出なかったり、ストレスになってしまったりすることもあると思います。
──横山さんのお宅ではどんなおこづかいの渡し方をしていますか?
横山:年齢の離れた6人の子どもがいますが、基本的には小学3年生で月額500円からおこづかいがスタートします。毎月のおこづかいで足りない場合、子どもたちはお年玉から取り分けておいた「年間のおこづかい
「おこづかいが足りなくなって困った」もお金の経験に
質問2:「おこづかいが足りなくなっちゃた」と子どもに言われたら?
──納得できる理由なら追加分を渡したり前借りを認めたりしてもよいでしょうか。
横山:「おこづかいの追加はない」ことをルールとして、できるだけ守ったほうがいいと思います。一時的な気持ちに流されて浪費してしまうのは、大人にもよくあること。将来大きな失敗をしないためにも、子どものうちに「計画的に使わなかったから、失敗した」を身にしみて実感することは良い経験になるんです。
夫婦ともにファイナンシャルプランナーである私たちは「おこづかいはお金の使い方を学ぶ訓練」と考えています。おこづかいは毎日やそのつどではなく定期的にまとめて渡して、本人がやりくりを考えたりお金を貯めたりできる環境を用意してあげることが大切だと思います。
──なるほど。おこづかいをゲーム課金に使う子どもも多いです。「お金の使い方としてよいのか気になる」という保護者の声もありますが。
横山:やり方やルール次第だと思います。大人には「ゲーム課金=浪費」の固定概念がありますが、本人がよく考えたうえでとても欲しい装備があるのであれば、一概にダメだと決め付けなくてもいいのではないでしょうか。もちろん「課金が癖になってしまっている」「おこづかいがどんどん足りなくなってしまう」ようなことがあれば注意が必要です。子どもが電子決済の仕組みを理解しておらず、親のクレジットカードでどんどん課金してしまった事例を聞くこともあります。
子どものおこづかいをドルで。メリットは?
質問3:おこづかいを外貨で渡してもよい?
──横山家では、おこづかいを円かドルか選んで受け取れるそうですね。実際にドルを選ぶお子さんはいますか?
横山:最近は半分ぐらいの子どもたちがドルを選んでいます。
──ドルは、紙のお札で渡すのでしょうか。そして、お子さんたちは好きなときに円に両替できるんですか?
横山:紙幣です。電子マネーを使うことが増えていますが、最初は現金で管理したほうがお金の感覚をつかみやすくなるところはありますね。
子どもたちは円安・円高の状況を見て「日本円が102円の時にドルでもらっておいて、115円の時に円に両替する」というふうに活用しています。親の側であらかじめドル紙幣を用意しておく必要がありますし、両替の手数料も親持ちです。多少手間とコストはかかりますが、子どもたちが「今だったら円でどれぐらいになるんだろう?」といった意識を持つきっかけになっているなと感じます。
家計はお金の教材。月1回のマネー会議を
──お金のスキルが高まりそうですね。おこづかいのルールを親子で話し合う時、どんな方法がおすすめですか。
横山:横山家では月に一度、親の給料日後で、家族みんなが集まりやすい日にマネー会議を開いています。30分から1時間くらい、進学や塾に通うかどうかなどについても話し合います。「『鬼滅の刃』を全巻そろえるかどうか」の議題が出た時は、読む人と読まない人がいるため家計費としては承認されず、読みたい人たちだけでおこづかいを出し合ってそろえる結論になりました。
──「子どもにお金の話はタブー」としているご家庭もあります。塾の費用などを明らかにすることで子どもに悪影響はないのでしょうか。
横山:子どもとお金の話をすることに抵抗を感じるかたも多いですね。すべてではなくても、可能な範囲で話し合うことは子どもだけでなく家族全員の金銭感覚の育成につながると思っています。
横山家のマネー会議では、両親の収入や資産、月々の支出も家計もすべてオープン。家族全員で収支を見て「今月はこれぐらい残ったから1回貯金のほうに回そう」、支出について「ここは無駄になっちゃったね」などの振り返りをします。ダメ出しよりも「適切なお金の使い方をしようね」といった意味合いが強いです。
──マネー会議には、何歳ごろから参加できるでしょうか。
横山:未就学児でも参加可能だと思います。子どもより大人の意見を優先しないことも大事ですね。子どもたちから出た「タバコ代は本当に必要?」の疑問は、私がタバコをやめるきっかけにもなりました。
同じようにお金の教育をしているつもりでも、子どもたちの金融リテラシーはさまざまだと感じます。お金の話を通して、子どもたちの成長を感じられるのもマネー会議の魅力ですね。
まとめ & 実践 TIPS
「周りがこうだから」「足りないみたい」と、よく考えずに渡してしまいがちな子どものおこづかい。家族でルールを決め、お金の使い方について話し合うことは大人の側にも無駄づかいを防ぐメリットがありそうです。お金のスキルを伸ばせる家族のマネー会議、開いてみてはいかがでしょうか。
編集/磯本美穂 執筆/樋口かおる
『子どもが10歳になったら投資をさせなさい』(横山光昭著、青春出版社刊)
家計再生コンサルタント、ファイナンシャルプランナーの横山光昭氏が教える、学歴より大切な《お金のスキル》。6人の子育て経験と2万3,000人を超えるお金の相談から導き出された、親が子どもに与えるべき投資思考を紹介。
- 育児・子育て