「長時間の勉強は怒らないのに、なぜ長時間のゲームは怒るのか?」子どもの質問にどう答える?

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親子のコミュニケーションを深めたいと、本『どう解く?』を手がけた著者の山﨑博司さん、木村洋さん、二澤平治仁さん。多くの子どもたちから寄せられた<2大疑問>にお答えいただきます。社会が急速に変化していくなか、大人も価値観をアップデートする必要があると感じるその解答とは?

「どうして勉強はずっとしても怒られないのに、
ゲーム、YouTubeは怒られるの?」

——ゲームやYouTubeなどネットとの付き合いで悩まれている親御さんがとても多いです。個人的にどんな答えを導き出されますか?

山﨑:ゲームに関してはすごく難しいですよね。算数や国語だけでなく、子どもにとっては走り回ることも学びですし、ゲームだってデザインやコミュニケーションの方法なども学べて、悪いものではないと思っています。だから、「ゲームをずっとしていることは悪いこと」とする大人の風潮をまず疑ったほうがいいのかもしれない。

大人でも、今でも子どものころのゲームの話をよくして盛り上がりますよね。勉強の内容はまったく覚えていないけど、ゲームのことは僕も鮮明に覚えています。人生を長い目で見たら、カルチャーとして体験しておくことも重要な経験になるのではと思っていて。
ただその時間がどう意味のあるものになるかは、親も一緒に考えて言葉かけする必要がありますよね。

木村:ゲームに関してはまさにそうで、僕は小さいころ、家で一切やらせてもらえなかったんです。ドラゴンボールなどのアニメも知らなくて、クラスメイトの話題に一切ついていけなくて。みんなで「いっせーの」でドラゴンボールのポーズをやった時、僕だけ知らないから変なポーズをしていたのが本当に恥ずかしく辛かったのを今でも痛烈に覚えています(笑)。
大人になってからも、あの時のアレがと言われてもわからず、カルチャーを共有できない辛さは今でも感じているので、子どもには映画も見せるしゲームもなんでもやらせています。目が悪くなるからやりすぎないようにというのと、ゲームばかりだと困るから勉強も必要だよね、という声かけだけですね。

でも一番怖いのは、ただの消費者になること。ゲームや映画でも、カメラアングルやライト、デザインなど一つの作品から学ぶことはたくさんあるので、作品を介してそうした話を徐々にしていきたいと思っています。

二澤平:声かけをしなければ子どもはずっとゲームをしたり、動画を見たりしてしまうものだと思います。その先に親は、何の目的やゴールを見据えているかですよね。ゲームで負けて悔しいという気持ちを味わうのか、次はこうしようと作戦を立てるのか。ゲームはダメだと決めつけず、何かを学ばせているという視点、違う目線でゲームをしている時間を眺めてみると発見があるかもしれません。

やりすぎはもちろん悪いので手綱を引いて環境をつくるのは大事ですが、ある程度自由にさせている感じで見守る、というのがちょうどいいと感じています。

「学校に行きたくない」
子どもが言ったらどうする?

——コロナ禍では学校が休校し、「そもそも学校ってなんで行くんだろう?」というのは、子どもならずとも一度は考えた疑問でした。

木村:普通のことが普通でなくなるなか、「どうして学校に行く必要があるんだろう?」という質問は、確かに子どもたちからも多く寄せられましたよね。

山﨑:僕は、学校に行きたくなくて行けない子は、家で勉強するのでもいいと思うんです。コロナ禍では、Zoomなどを使ったオンライン授業が浸透したり授業の選択肢に気付けたりした面もありますよね。オンラインなら授業に参加できたという声もあり、これがもっと認められていくと良いですし、無理に学校に行く必要はないのではと思いますね。

木村:無責任なことは言えませんが、行かないこと自体は問題ではないと思っています。行きたくなければ行かなくてもいいし、そもそも行くことがゴールではない。
学校で何をするかが大切で、学校に行くことでどんなメリットがあるかは、大人に説明責任があるのではないでしょうか。面倒くさいから行かずにゴロゴロしているのはもちろん違うと思いますが、行かないのであれば、家で何ができるか親子で考えて決めていくべきですよね。

二澤平:親が何をゴールに見据えているかがわかっていれば、何ができるか自ずと見えてくるのではないでしょうか。でもそれはシチュエーションによっても変わりますし、休んでもいいと思えば休んでもいい。ゴールを見据えた上で個々に判断するしかないですよね。
基本的には僕も、行きたくない子に無理矢理行かせるのは違うのかなと思っています。

まとめ & 実践 TIPS

学校も行くのが辛いなら行かなくてもいい、ゲームもしていい。お三方とも寛容な答えでした。親としての姿勢や意見をしっかり持って、子どもに示していくことも大事なのかもしれません。そのためにはまず親が、「ゲームってなんでずっとしていたらいけないの?」「そもそも学校ってなんで行くんだろう?」と、子どもと一緒に考える必要がありそうです。

『答えのない道徳の問題 どう解く? 正解のない時代を生きるキミへ』
文/やまざきひろし 絵/きむらよう 絵/にさわだいら はるひと ¥1,650/ポプラ社

プロフィール

山﨑博司、木村洋、二澤平治仁

山﨑博司(やまざきひろし)

1983年生まれ。早稲田大学大学院修了。コピーライター。現在、二児の父。

木村洋(きむらよう)

1980年生まれ。京都精華大学卒業。アートディレクター。現在、二児の父。

二澤平治仁(にさわだいらはるひと)

1975年生まれ。明治大学卒業後に渡米。アートディレクター。現在、二児の父。

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