昆虫と触れ合うことを楽しめる子どもに育むには

近年、都市部を中心に自然が失われたり、子どもたちが屋内の遊びに移行したりする傾向が強まっています。これにより、昆虫に苦手意識を持つ子どもたちが増加しているのです。昆虫と触れ合うことが持つ意味や、苦手意識を少しでも緩和するにはどのような手立てがあるのでしょうか。「ぐんま昆虫の森」の筒井学さんに聞きました。

保護者の世代から自然体験が少なくなっている

「子どもの自然離れが深刻化している」といわれていますが、実は今の保護者の世代から自然離れは始まっています。そのため、家庭でなかなか自然に出て行く機会をつくれないし、自然との触れ合い方を教えられないといった問題が出始めました。こうした状況を受け、ぐんま昆虫の森では、家庭で参加できるような数々のイベントを設け、お子さんだけでなくご家庭全体で自然を楽しめるような体験活動を大切にしています。

では、自然を体験することには、どんな意味があるのでしょうか? 私は、4つの意義があると感じています。

1つ目は、情操教育による人格形成につながる効果です。自然を美しいと感じる心や、足元にある小さな生命を発見する喜びは、子どもの心を育んでいくと思っています。

2つ目は、謙虚さを学ぶことです。大きな自然の力を感じると、「自分は自然の中の小さな生物にすぎない」「自然に生かされているんだ」ということを実感します。人間の存在を俯瞰(ふかん)することができるのです。

3つ目は、自然や虫の特徴を覚えて、危険か否かなどを判断して行動する「生きる力」を育むことができることです。これは、社会を生きていくうえで有効な力だといえるでしょう。

4つ目は、生命の尊さを感じることができることです。自然の中にいると、生死を間近に感じます。いまの日本では、生死を教えることはとても難しくなっています。バーチャルの中での体験が増えたこともあり、生命の価値を理解できず、未成年がむごたらしい事件を起こしてしまうということも出てきてしまいました。

昆虫は自然を感じる窓

昆虫は、最も自然を身近に感じることができる窓だと思っています。小さな昆虫の命は、びっくりするくらい簡単に失われてしまいます。はかない生物の姿を目の当たりにするなかで、自然の摂理を学んでいきます。

さらに、昆虫は自然環境に合わせて姿を多様に進化させてきました。日本だけで昆虫は、約3万種類も存在するといわれています。自然環境に適応した昆虫の姿を、見て、触って、観察することにより、自然を学ぶことができるのです。

昆虫と楽しく触れ合う子どもを育てるには

いわゆる「虫嫌い」の子どもを、「虫好き」に切り替えさせることは難しいかもしれません。しかし、そのなかには、実は「嫌い」なのではなく「知らないから近付きたくない」と思っている子が少なくないのです。そのため、昆虫の実態を知らせてあげることで、興味を持つきっかけになることがあるのです。

たとえば、下記の3つの手法などが有効だと考えられます。

【1】図鑑を見たり、昆虫のクラフト模型を作ったりするなど、子どもが興味を持つレベルから昆虫と接点を持たせていきましょう。そのうち、「どうしてこんな形をしているのか」など、少しずつ関心の幅が広がってゆきます。

【2】地域の自然体験イベントなどに参加してみましょう。参加する際には、保護者のかたも楽しむことが大切です。子どもが昆虫を苦手になる要因として、ご家庭で「昆虫は怖いものだ」と教えてしまったということがあります。反対に、保護者のかたが昆虫に関心を寄せれば、子どもも興味を持てるものです。

【3】学校での学びを掘り下げて聞いてみましょう。小学校では、「モンシロチョウの生態」などを学ぶ単元があります。ぐんま昆虫の森にも、多くの小学生が遠足などのイベントで訪れます。学校の生活科や理科で、どんなことを勉強したのか、何が楽しかったのかなどを尋ねていき、子どもの発見・思考を褒めてあげることで、関心を深めていくことができるのです。

プロフィール

筒井学

筒井学

1990(平成2)年から東京・としまえんのもり昆虫館に勤務。1997(平成9)年よりぐんま昆虫の森建設に寄与後、勤務。主な著書に、『はじめてのむしのしいくとかんさつ』(学研プラス)、『小学館の図鑑NEOの科学絵本 セミたちの夏』(小学館)などがある。

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