脳に効く「朝ごはん」とは?「足す」だけでOKの簡単レシピや食べたい気持ちにさせる工夫

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栄養いっぱいの朝ごはんをしっかり食べさせたいけれど、忙しい子育て世代にとって、手間も時間もかけて毎日朝ごはんを準備するのはなかなか難しいもの。『子どもの脳は、「朝ごはん」で決まる!』の著者で、育脳レシピを多数開発している管理栄養士の小山浩子さんに、「子どもの脳の育て方と朝ごはん」について、お話を伺いました。

この記事のポイント

日本の子どもに絶対的に足りていない栄養素は良質な「油」

—脳の成長はお母さんのおなかの中にいる時から始まり、小学生以降は「脳を作る」というより、「脳にいかに働いてもらうか」を意識して、食事は準備するといいと思います。今、日本の子どもたちに絶対的に足りていない栄養素はDHAやオメガ3脂肪酸といった脳の神経細胞を作る良質な「油」です。
脳の神経細胞は、木の幹から枝が伸びるように広がり、近くの神経細胞とつながり、回路を作っていきます。この回路のつなぎ目が「シナプス」と呼ばれるものであり、このシナプスの数が多く、また発達することで、脳は活性化されます。そのため、ぜひ良質な油を朝から摂っていただきたいです。朝ごはんのメニューが子どもの好みで変更できなかったり、朝から魚を食べるのはなかなか難しかったりという場合でも大丈夫です。アマニ油やえごま油にもオメガ3脂肪酸は含まれていますので、それをスプーン1杯納豆に足すだけで、1日の必要な油が摂れます。熱で酸化しやすい油のため、生のままサラダにかけたり、味はあまり変わらないので、スープやヨーグルトなどに混ぜたりしてもいいと思います。神経細胞は毎日育っていますので、毎日この油を摂っていただくことをお勧めします。かける時に、「これは特別よ」とお子さんに話しかけるのもいいと思います。子どもはおうちの方が自分のために何か特別にしてくれていると思うと、嬉しくなるものです。小学生、中学生、高校生と成長していく段階で、難しい時期もあるかと思いますが、食事は栄養だけでなく、精神面のサポートにもなります。朝ごはんの時の会話もぜひ大事にしていただけたらなと思います。

身体を作る、脳を作るのは「タンパク質」、頭の回転スピードを上げるのは「カルシウム」

子どものうちに骨や身体の臓器が作られていきますので、健康をないがしろにしてしまっては、脳を育てるどころではありません。冬場でも風邪をひきにくい身体、部活で骨折しにくい強い骨など、まずは健康が大事です。その上で育脳も一緒に考えていかなくてはなりません。そこで次に大事になってくる栄養素は、「タンパク質」です。
タンパク質は、朝ごはんでもしっかり摂っていただきたい栄養素です。朝ごはんでパンやお米で炭水化物は摂れても、タンパク質までなかなか摂れていないというご家庭が多いのですが、タンパク質は脳に送る血液を作ったり、筋肉を作ったりと、身体と脳を作る、素地の部分になっていきます。例えば、パン好きなお子さんでしたら、「チーズトースト」をお勧めします。スライスチーズを1枚足すだけで、かなりタンパク質とカルシウムも摂れます。「カルシウム」は、脳の神経細胞内で神経伝達物質をスムーズに働かせる手助けを行っており、頭の回転スピードを上げます。脳内の情報伝達の際に、大量に消費されますので、カルシウムが多く含まれているチーズやヨーグルト、牛乳などの乳製品はぜひ意識して摂っていただきたいです。

集中力が続く朝ごはん 続かない朝ごはん

—朝ごはんは、食べないよりは食べた方がもちろんいいのですが、例えば「あんパン」だけの朝ごはんなどはあまりお勧めできません。あんパンだけを食べて学校に行った場合、血糖値が急上昇し、その後インスリンが大量に分泌され、血糖値は一気に下がります。そのため、学校の2時間目ごろには低血糖状態に陥ってしまいます。そうすると授業に集中できなくなったり、眠くなったりしてしまうのです。お昼ごはん前の4時間目まで集中力を切らさないためには、糖がゆっくり上昇する食べ物を朝ごはんで摂ってください。同じような理由で、炭水化物に偏ってしまう「ふりかけご飯」よりも、タンパク質も一緒に摂れる「卵かけご飯」がお勧めです。お子さんが嫌いでなければ、白いご飯を雑穀ご飯にしていただくと、血糖値の急上昇を抑えながら、脳にエネルギーを安定供給できるので、さらにお勧めです。卵を入れたり、納豆を入れたり、アマニ油を入れたりと、いつもの朝ごはんに「ちょっと足す」だけで最強の朝ごはんが作れます。

ピンク雑穀米の卵かけごはん 『子どもの脳は、「朝ごはん」で決まる!』/小学館

朝ごはんがなかなか食べられない時は?

生活リズムが乱れていると、朝お腹が空きにくい

朝ごはんがなかなか食べられないお子さんは、生活リズムが乱れているケースが多いです。夜ごはんの後に、遅い時間までおやつを食べていたり、夜遅くまで起きていたりするお子さんは、なかなか朝お腹が空きにくいものです。朝きちんとお腹が空いて目が覚めるというリズムを取り戻すのには、約2週間かかります。リズムを正すのは子どもの意思もあるのでなかなか難しいですが、そういう時は、「朝ごはんを楽しみにさせる」というのはどうでしょうか。
以前、小学生の保護者の方から「朝ごはんを子どもが食べなくて困る。食べてもらえない朝ごはんを作るのはつらいし、子どもに自分で作って欲しい」という相談をされました。その時に子どもたちにアンケートをしたら、食べたい朝ごはんのダントツ1位は「フレンチトースト」でした。そこで、ポリ袋に卵と牛乳、パンを入れて翌朝レンジでチンするというメニューを提案しました。チンした後は、はちみつなどをかけて食べます。これなら子どもでも卵さえ割れればできますし、片付けも簡単です。家庭科の授業でお子さんに教えたら大喜びでした。その時私が感じたのは、栄養バランスを考えた朝ごはんを作るのはもちろん大事ですが、やはり子どもが楽しくなるような、子どもの食べたいものを作ってあげるということも大事なようです。

食卓の雰囲気を変えることで、食べたい気持ちになることも

また、食事の雰囲気を変えるのも1つの手です。「黄色」を食卓に取り入れると、朝から脳も活性化します。カレーが好きなお子さんでしたら、ターメリックでご飯を黄色くした朝カレーや、直接口に入れなくても、黄色いマグカップやランチョンマットを食卓に並べてもいいと思います。普段箸置きを使わないご家庭なら、子どもが好きそうな箸置きを使うとか、ちょっとした変化が朝ごはんへのスイッチになることもあります。きっとお子さんが大きくなった時に、食事や食卓の風景は、いろいろな時に思い出すと思います。その時に温かい気持ちになったり、感謝の気持ちになったり、頑張れたり。長い目で見ると朝ごはんは、「子どもの心の栄養」につながっているのだと思います。家庭の中でできるやり方で十分ですので、ぜひ実践してみてください。

まとめ & 実践 TIPS

朝ごはんをしっかり食べさせないと!と難しく考えすぎずに、子どもが食べたいもの、食べられるものに栄養を「足す」という考え方で作れば、大らかな気持ちで朝ごはん作りも楽しめそうです。また、慌ただしい朝でも、食卓の雰囲気づくりや会話が子どもの心の栄養になると思えば、頑張れそうですね。

プロフィール

小山浩子

小山浩子

料理家・管理栄養士・フードビジネスコーディネーター
大手食品メーカー勤務を経て2003年フリーに。料理教室の講師やコーディネート、レシピ開発、栄養コラム執筆、NHKをはじめ健康番組出演等幅広く活動。料理家としてのキャリアは25年以上。これまで指導した生徒は7万人以上に及ぶ。オフィシャルホームページ=http://koyama165.com/

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