いまどきの「習い事」事情【前編】

今回のテーマは、前回の速報版に引き続き「習い事」についてです。習い事は子どもの未来の可能性をひらくチャンスとなる一方で、時間や費用、ヤル気や上達度合いなど、さまざまな不安や悩みと背中合わせなのが実情です。そこで、アンケート結果の詳細をご紹介しながら、習い事に通う本来の意味や、習い事を通じて子どもとどのように接していくのかなどについて、今回から前編と後編に分けて考えていきたいと思います。

はやりの「習い事」いま・むかし
習い事の平均は週2,3回 学び・部活・遊びとのはざまで

はやりの「習い事」いま・むかし

現在、お子さまが「習い事をしている」割合は全体の82.6%にのぼっていることや、水泳の人気が高かったことなどは、前回の速報版でもご紹介したとおりです。
今回は、もう少し詳しく見ることにしましょう。
まず、習い事にどのような「はやり」があるかを過去の調査と比べてみたところ、【表1】のようになりました。これは、今回の「教育発見隊アンケート」の結果と1998年にBenesse教育研究開発センター(旧:ベネッセ教育研究所)が小中学生の保護者を対象に実施した「子育て生活基本調査II」の結果を比較したものです。

【表1】「今までに経験したことのある習い事(経年比較)」(複数回答)


*1 カッコ内の%は、すべての回答のなかで、その項目(習い事の種類)を経験したことがある人の割合を示しています。
*2「サッカー(18.6%)」と「野球(5.9%)」の合計
*3「楽器(36.3%)」と「音楽教室(18.3%)」の合計
*4「英会話などの語学教室や個人レッスン」を指す

上位(6つ)に入っている項目は同じですが、7年前と比較して

  • 「英会話教室」などの語学の経験率が増えた
  • 運動系の習い事が増えて、習字や音楽などの文化系が減った


ことがわかります。文科系の習い事が減っているのは、上位に入った項目以外にも共通してみられる傾向で、ここには掲載していない絵画やそろばんの経験率も7年前と比べて減っています。
ちなみに2002年に当社が小中学生の保護者を対象に行なった「第2回子育て生活基本調査(第2章 子どもへのしつけ・教育観)」では、休日の過ごし方について「母親の希望」と「実際に子どもがどう過ごしたか」の2観点をきいています。これによると、48%の母親が「(休日は)友だちと外で遊んで欲しい」と答えたのに対して、実際に「友だちと外で遊んでいる」と答えた子どもは28.7%にとどまり、大きな開きが見られました。外で遊ぶ機会が少ないぶん運動系の習い事に通うことで、少しでもからだを動かして健康になって欲しい、体力をつけてほしい、という保護者の願いは強いのですが、ゲーム世代の現実は少し違うのかもしれません。

今回の「教育発見隊」アンケートでも、例えばこんな自由回答をいただいています。

  • 以前から、スイミング・サッカーなどの習い事をすすめているのですが、本人がやりたがりません。せめて大人になる前に、泳げるようにさせておければいいと思っています。スイミングを習う気になるのを待っていますが、一向にその気配はありません。
  • あまり運動が得意でないので、新体操をさせてみたのですが、苦手なものを補うより得意なものを伸ばすほうがいいのかと、迷っています。
  • できれば、野球などの複数(団体・チーム)でするスポーツを習わせたいが、本人はまったくやりたがらない。
  • スポーツ系の習い事をさせたいのですが本人が行きたがらない。


次に、習い事の種類に男女差があるのかをみたのが下の【図1】です。
【図1】「今までに経験したことのある習い事(男女別)」(複数回答)


やはり、というべきか「サッカー」「野球」をはじめとする運動系は男の子の経験率が高く、音楽や踊り、習字など文科系の習い事は女の子の方が高い結果がでています。人気上昇中の語学は大きな差は見られないようです。

ところで、1987年に当社が行なった調査(「モノグラフ・小学生ナウ」VOL.7-11)の結果【図2】をご覧ください。かつて言われていたステレオタイプの「男の子らしさ・女の子らしさ」が、習い事にも表れていたことがわかります。しかし今回の教育発見隊の結果を見ると、習い事の項目では明らかに男女差が小さくなっているようです。

【図2】「今までに経験したことのある習い事(1987年・男女別)」(複数回答)



*おけいこに「行っている」人を100%とする。
Benesse教育研究開発センター(旧:ベネッセ教育研究所)「モノグラフ・小学生ナウ」VOL.7-11より

習い事の平均は週2,3回 学び・部活・遊びとのはざまで

皆さんのご家庭では、1週間に何日くらいを習い事に費やしていますか?今回の結果は、平均すると週に2.5日(=週に2,3回)、となりました。1986年に当社が行なった調査(「モノグラフ・小学生ナウ」VOL.6-12、小学4〜6年生対象)では平均1.6回/週でしたので、約1日分増えたことになります。

学齢別に見てみましょう。小学校入学前は「1,2回以下」が約7割を占めています。これが小学校入学を機に回数が増えはじめ、3,4年生でピークを迎えます。

例えば、小学3年生の約半数が週3回以上習い事をして、このうち週5回以上通う子どもも17%います。小学校高学年になるとふたたび減りはじめ、中学生になると、習い事をしている割合自体が大幅に少なくなります。これは、小学校高学年になると5,6時限の日が増えるために「習い事に通えない」「子どもが疲れる」「友だちと遊ぶ時間がない」といった理由で習い事をセーブしたり、中学受験や補習のために習い事(おけいこ)をやめて学習塾に通うケースが増えるためと考えられます。

実際、習い事と、それ以外の学習や遊び、部活動などとの両立について悩んでいる方が非常に多いようです。自由回答でいただいた内容の一部をご紹介します。

  • 中学受験のため、続けたい(させたい)習い事を中断しなければならないので残念。
  • 習字を週1回習わせているが、部活動を始めてしまったため、コンクールや演奏会が近くなると練習が中心になり、習字に全く行けない月が出てきてしまう。2つを同時に追い求めるのは無理だと分かっているが、やりきれない気持ちもある。
  • 水泳などは、いつまで習わせるのか?子ども自身は、頑張って選手になりたいと言っていますが、果たしてそこまで続けるものかどうか…。
  • 塾とピアノと英語に、週末は一日中野球なので、習い事を整理して少しゆっくりした時間があるほうがいいと思いますが、本人はどれもやめたくないと言っています。
  • 下の子は何にでも興味を示しすぐに習いたがり始めるが、結構それをやめたがらず、あれもこれもと始めてしまうので、体がいつも忙しい状態になってしまう。
  • 今は何でもやってみたい気持ちでいっぱいなようだ。裏腹に、遊ぶ時間がなくなると嘆いたりもしている。もっと時間があればいいのにねと、なぐさめている。


これらは主に「できることなら習い事をやめたくない」と子ども自身が思っている場合のコメントです。では、もし何らかの理由で子どもが「やめたい」と言ったときに、皆さんはどうしているのでしょうか。その場合の対応について訊ねたところ、「子どもに理由を聞いて納得できればやめさせる」が全体の4分の3を占め、他の回答を大きく上回りました【下図3参照】。

【図3】子どもが習い事をやめたいと言ったときどう対応するか

また、ヤル気がみられなかったり、練習をしなかったり、上達がみられないなどの理由で「このまま続けさせるべきか、やめさせるべきか」と悩む方もおられます。今回お寄せいただいた自由回答をみる限り、特に音楽系や語学系の習い事にこうした不安や悩みを抱えているケースが多いようです。

  • 自分の経験から、大人になって、あの時親が無理やりにでも続けさせてくれていた方が後々の自分の為になった、と苦く思うこともあるので、子どもがやめたいと言っても、なかなかやめさせることができません。子どもには、今やめたいと思っていても、やめなくてよかったと思える時が来る、と言い聞かせているのですが…。
  • 長く続けているわりには、上達しない。(ピアノとバスケ)ピアノなどは、練習しない。でも、継続は力なりの言葉を信じて応援している。バスケに関しては、最高学年になると、自覚が出来て伸びると言うコーチの言葉を信じて応援している。
  • 苦手つぶしのために始めた習い事は結局良い結果を残せなかった。反対に子どもが興味のあることは練習が辛くても耐え、上達も早かった。子どものためと思っても無理強いは親子共々ストレスが溜まる結果になると思う。


このように、総じて、やめたいと言われたらまずは話し合うようにしていることや、子どもの将来や人間的な成長のために、できれば続けさせたい、という親としての思いが浮かび上がってきます。

さて、ここで考えておきたいのは、子ども自身の意思がとても大切だということです。子どもが自分の意思で何かをしようとしたときに、親がそれを認め、応援してくれることを子どもが感じ取れるかどうかで、その後の態度も変わってきます。このことを親子がきちんとふまえ、意識を共有していれば、多少の困難や気分の波があっても何とか乗り越えられたり、たとえ習い事をやめても結果として子どもにとってプラスに働くはずです。

そのためにも、習い事を始める・やめるときに、あらかじめ親子で「ここまではがんばる」といった目標を決めて、きちんとそれを守り、やり遂げさせるといったステップを作っておくことも大切ではないでしょうか。

習い事に関わるご家庭での悩みは、まだ様々あるようです。「お金がかかりすぎる。他の家庭ではどう考えているの?」「習い事を続けるための時間的な負荷が大きい」「幼児からの習い事は本当に子どものためになっているの?」などについて、次週の【後編】で触れてみたいと思います

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